コロナ禍での営業スタイルとして、Zoom等のオンラインビデオツールを利用した「オンライン商談」が一般的になりつつある。緊急事態宣言に伴い、著しく外出が制限されている現在の状況下では賢明な選択だろう。

とはいえ、対面と比較すると伝わる情報量は圧倒的に少なく、「相手のリアクションが見えづらい」「信頼関係を築きづらい」といったデメリットは否めない。

そこで今回は、これらのデメリットを緩和し「オンライン商談」で成功率を高めるために、世間の営業担当社員が取り入れている12のティップスをまとめた。

セールス兼、カスタマーサクセス責任者 として、オンライン商談の経験を重ねるスターティアラボ株式会社 クラウドアプリケーション事業部の小此木 将(おこのぎ しょう)さんのコメントも交えて紹介しよう。

1、「明るさ」と「清潔感」でカメラ映りを意識

上半身しか映らず、ワイシャツのシワなど細かい部分まで目が届きづらいオンライン商談では、気持ちがゆるみ身だしなみに手を抜きがちだ。しかし、清潔感のある服装と明るさの調整だけでも、印象が格段に変わる。

このように「女優ライト」とも呼ばれるリングライトを使ってカメラ周りの明るさを調整すると、印象が垢抜けることがおわかりいただけるだろう。通販サイトでは、お手頃なものだと3,000円前後で購入できる。

2、自己紹介を丁寧にする

特に初対面の場合、対面で会ったときとは比にならないほど、相手との距離感を感じてしまうオンライン。そんな距離を埋めるには、丁寧なコミュニケーションが欠かせない。

オンライン商談サービスを展開する「ベルフェイス」が提案しているのは、営業担当者の出身地や趣味などを記したプロフィールシートの活用。商談を始める前にプロフィールシートを画面共有で見せながら丁寧に挨拶をすることで、親しみを持ってもらえるのではないだろうか。

3、壁紙にクライアントのWEBサイトを使う

クライアントのWEBサイトのスクリーンショットをオンライン商談時の壁紙として活用している人も。投稿にもあるように、相手からのツッコミが期待でき、冒頭のアイスブレイクにもなりそうだ。

4、プレゼン資料は「動線設計」と「見やすさ」を重視

オンライン商談に切り替わったことで、プレゼン資料にも工夫が求められる。スターティアラボ株式会社でセールスを担当する小此木 将さんの資料を一つの実例として紹介する。

「対面商談であれば特に見てほしい箇所への指差し、書き込みなど物理的な視線誘導や補足ができていましたが、オンラインではオフライン時ほど強い誘導ができないという理由から、“導線設計”と“見やすさ”が重要になります」(小此木さん)

小此木さんが推奨するポイントは以下の4点だ。

・1スライドに1メッセージ
・文字を大きく
・図やグラフをシンプルに
・色のトーンを淡くする

そして、それらを反映した資料の実例がこちら。

<改定前>

<改定後>

一度に認識できる情報量を減らせば、強い誘導ができなくてもメッセージが伝わりやすい。また、色のトーンを落とすことで視界がチカチカしてしまうことを避け、視認性を高めやすい。

5、しゃべる速度を1.1〜1.2倍にする

オンライン商談の場合、通信環境を十分に整えたとしても「伝わる情報量が圧倒的に減る」という点に配慮することも必要だろう。

「商談時、表情や口の動きが見えたほうが受け手はわかりやすくなりますが、オンライン商談では、資料を全画面表示して営業の顔は隅に小さく表示されるなど、顔の情報は相手の視界に入らないことが多いと思います。また、お客様は”初見の資料”を見ながら営業の話を聞いているということも踏まえると、しゃべる速度を通常の1.1〜1.2倍にして、クリアにしゃべることも求められると思います」(小此木さん)

6、リアクションは1.5倍大きく

小此木さんいわく、感情表現が制限されてしまうオンライン環境下では、大げさすぎるぐらいのリアクションがおすすめとのこと。

「オンラインでは、細かな仕草や目線配りに加えて、うんうんと軽く頷いたり、『なるほど』などと小声でつぶやいたりしても、相手に伝わらないことが多いため、わかりやすく大きめなリアクションをすることが大切です。お客様に『あなたの話を聞いています!』という姿勢をはっきり見せましょう。また、商談冒頭でお客様へ一言、『オンラインのため、ぜひ大きめにリアクションしていただけると嬉しいです』と愛想よく伝えると、軽いアイスブレイクになり、その後の商談をスムーズに進めるのに効果的ですよ」(小此木さん)

7、カメラに近づく、離れるをうまく使う

商談の最中、カメラ映りを意識して「近づく」「離れる」をうまく使えるようになると、よりメリハリのあるプレゼンテーションになるかもしれない。

「まず、接続時は顔がアップにならないよう気をつけ、バストアップで映るのがスマートです。そのうえで、熱を込めて伝えたいときには表情がわかるように少し近づいて話す、ジェスチャーを交えるときにはカメラに映るように少し離れる(手が見切れないように)、をうまく使えるようになると、より伝わりやすくなるかもしれません」(小此木さん)

ただ、勢いよく動きすぎると映像がブレることもあるので、ゆっくりと落ち着いて行うのがおすすめだ。

8、印象に残るアイスブレイクの活用

小此木さんのコメントにも「アイスブレイク」というキーワードが出ていたが、ややキレのあるアイスブレイクを取り入れることで、オンライン上でもグッと相手の印象に残りやすくなる可能性が高い。モノマネは一つの参考として、何かネタを見つけておきたいところだ。

9、発言するときは手を上げる

発言するときに手を上げることで、より相手にわかりやすいアピールになると話す営業マンもいる。お互いのリアクションや口の動きが見えづらい場面で、「発言したい」という意思を明確にアクションで示すのは良い配慮だと言えるだろう。

10、「質問はありますか?」など、適度に声をかける

オンライン商談を経験した顧客側の意見も、ぜひ参考にしてみてほしい。オンライン環境下では、一方的に営業が話しすぎずてしまう傾向があるようだ。そのため、折を見て「質問はありますか?」「いかがですか?」といった声かけを取り入れ、相手が意見を言いやすい雰囲気を作ることを覚えておこう。

11、締めは手を振るぐらいでちょうどいい

オンライン商談時、「退出の仕方」に迷う人もいるのではないだろうか。リアルならではの温かみが伝わりづらく、やや大げさなリアクションが求められるオンライン上では、「最後は手を振るぐらいでちょうどいい」と主張する人も。相手との関係性にもよるが、一度試してみてはいかがだろうか。

12、商談を録画して客観的に振り返る

よりオンライン商談の質を向上させ成功率を上げるために、商談を録画して今後に生かすこともおすすめしたい。

「これまでも自分の商談を録音しての振り返りや、上司や先輩等の同席者からフィードバックをもらうことは可能でした。ただ、動画で自身の表情や資料の切り替えタイミングなど、第三者として自分の商談を客観的に振り返ることができるのは大きなメリットです。また、トップセールスがどのように商談をしているのかを動画で共有したり、上司が部下の商談をチェックすることもできたりと営業スキルの底上げが期待できます」(小此木さん)

急速なデジタルシフトで、より一層求められる「顧客視点」

否応なしに慣れない環境への対応が求められていることを考慮し、小此木さんは「これまで以上にお客様に寄り添った商談が求められる」と語る。

「オンライン商談を始めてから、『相手に寄り添う』という意識が以前よりも強くなりました。急速にデジタルシフトしていく中で、連日商談をしている営業側はオンライン化を当たり前に思うかもしれませんが、現時点では、慣れないスタイルでの商談に不安や戸惑いを感じているお客様もいるはずです。限りある商談の時間を顧客視点、顧客起点で考えられる『素晴らしいセールスパーソン』であふれることを切に願っています」

<取材協力>
スターティアラボ株式会社 クラウドアプリケーション事業部 シニアマネージャー
小此木 将

取材・文:小林 香織