世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。感染者が爆発的に増えたことで、アメリカやヨーロッパなどの各国で国境閉鎖、商業施設や飲食店の営業停止、10人以上の集会禁止など、あらゆる対策が講じられている。

今回は、この新型コロナウイルスの緊急対策として、3つの「オンライン診療サービス」を紹介する。そのうち「first call」と「LINE ヘルスケア(β版)」は、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として、経済産業省が設置する「健康相談窓口」に認定されており、2020年3月末まで無料で利用可能だ。

健康に不安がある、または慢性疾患等により医薬品が必要だけれど二次感染を恐れて来院を避けている、といった課題を持つ人に大いに役立つサービスだ。

テレビ電話も可能・月額550円で使い放題の「first call

株式会社Mediplatが提供する、医師が実名で「オンライン診断」するサービス。ユーザーは、気軽に相談ができる「チャット相談」または、じっくりと話を聞いてもらえる「TV電話相談」(15分間)のいずれかを選んで利用する。ただし、無料で利用できるのは“チャット相談のみ”となっている。

チャット相談は相談内容を送信して医師の回答を待つスタイル、TV電話相談は医師の対応可能な日時から希望を選び、予約時間に医師とTV電話で会話するスタイルだ。

整形外科・内科・産婦人科・小児科・精神科・眼科・がん診療科など、全12科目に対応しており、幅広い内容の健康相談が可能。月額費用は550円(税込)と低額ながら利用回数の制限はなく、使い放題となっている。

「気になる症状があるけれど、来院する時間が取れず放置している」

「医者に行きたいけれど、新型コロナウイルスへの二次感染等を懸念し、来院のタイミングを見計らっている」

といった健康への不安を抱えながらも何らかの事情で来院ができていない人たちにとっては、価値のあるサービスではないだろうか。

また、法人向けのプランとして「ストレスチェック」や「オンライン産業医」といったサービスも展開。ストレスチェックでは年1回の法定ストレスチェックに加えて、月1回程度のストレス診断コンテンツにより、従業員のメンタルヘルスのリスクを早期発見しやすい。

さらに、オンライン産業医では産業医の定期訪問からオンラインでの面談など、産業医業務を受託することでスムーズな面談の実施と人事社員の負担削減にも貢献できるとのこと。

緊急相談も可・利用ごとに料金が発生する「LINE ヘルスケア(β版)

2019年12月に、LINE株式会社の共同出資により設立した合弁会社「LINEヘルスケア株式会社」が提供するオンライン診療サービス。

LINEを利用したチャット形式での相談となり、ユーザーは緊急度に応じて以下の3パターンから利用方法を選べる。

1、いますぐ相談する(2,000円/30分)
2、相談を予約する(2,000円/30分)
3、あとから回答をもらう(1,000円/1,000文字)

1・2はいずれも医師とのリアルタイムでのやり取りとなり、「いますぐ相談する」を選ぶと待機中の医師が対応する。ただし、時間や医師の状況により、すぐにマッチングできない場合もあるとのこと。また、「あとから回答をもらう」を選ぶと、48時間以内に回答が届く。

医師を選ぶ際は、診療科目、またはテーマ別にセレクトができる。診療科目は内科・小児科・産婦人科・整形外科・皮膚科・耳鼻咽喉科の6つで、テーマは「新型コロナウイルスの相談」「生活の悩み」「気になる症状」「子供の相談」「女性の悩み」の5つ。

必ずしも今すぐ相談できるとは限らないものの、深夜1時にアプリを開いてみたところ、一般内科を中心に10人の待機中医師が見つかったため、深夜帯の症状悪化など緊急時に利用しやすい点はメリットと言えるだろう。

定期的な通院通局が必要な患者向けの「リモートドクター

診療所向け電子カルテシステムや電子レセプトチェックシステムなど、ヘルスケア分野のITサービスを多数展開する株式会社アイソルが提供するオンライン診断サービス。

これは無料での利用はできないが、慢性疾患等により定期的な通院通局が必要な患者を対象に、ビデオコールによる医師の診断を受けた後、アプリ上で決済、薬や処方箋が自宅や職場に配送される、というシステムだ。

ただ、薬や処方箋を受け取れるがゆえに、既出の「first call」と「LINE ヘルスケア(β版)」に比べて、利用するまでの手間が生じる。オンライン診療を受けるには、事前にかかりつけ医に6ヶ月以上(2020年4月からは3ケ月以上)の対面診療を受けることが保険制度にて義務付けされている。

その上で「スマートフォンが利用できる」などの一定条件を満たし、オンライン診療が可能だと判断されれば、次回からオンライン診療が受けられる。

診療科目は適応疾患に基づいた診療科、及び自由診療(ピル処方、AGA、ED外来など)とのことだが、導入医院数については非公開となっている。

導入までのハードルは高いものの、定期的な通院通局が必要な患者にとっては、直接、医療機関に出向く回数を減らせることから新型コロナウイルスの二次感染予防につながり、十分にメリットがあるだろう。

なお、2020年5月末までは全国の病院・診療所・調剤薬局に対して、無償でリモートドクターの利用を提供している。

対面で言いづらい悩みやセカンドオピニオンにも

新型コロナウイルス対策の一環として、感染の二次予防になるというメリットに加えて、これらのオンライン診療サービスは、対面で言いづらい悩みを相談する、あるいはセカンドオピニオンとして利用するといった使い方も推奨されている。

何より、仕事や家事・育児等のやむを得ない理由で十分な時間を確保できない場合でも、隙間時間を活用して診断ができるのは、この上ないメリットではないだろうか。

前例のないものに強い抵抗感を示す日本の文化的背景もあり、医療機関へのサービス導入は大きく進んでいないようだが、今後のオンライン診療サービスの動きに注目したい。

取材・文:小林 香織