日本人に人気の海外旅行先でもあるハワイ。毎年約150万人もの日本人がハワイへと飛んでいきます。

現地では多くの日本人とすれ違うため、「日本人ばっかり」という声もよく聞きます(そう言うあなたも日本人なのでは?とツッコミを入れたくなりますけど)。

しかも日本人観光客の多くがワイキキエリアに留まったままです。ワイキキから少し離れれば、穴場の店や人気の少ないビーチもあるというのに、日本人観光客の多くがワイキキから出ないというのは、実にもったいないというか残念というか。


ワイキキから車で30分も走れば、このような求めていた南国パラダイスな景色が待ち受けています。


人が多いワイキキでですが、海に向かって左側にずれると人の数はぐっと減ってきます。

ハワイが人気なのはアメリカ人にとっても同じです。ハワイに最も多くやってくるのは北米からの人々で、その数は約600万人と日本人の約4倍。

訪れた人の中にはすっかりハワイを気に入り、引っ越してくる人も少なくないといいます。また、移り住んでくるのは「暖かいハワイで余生を暮らそう」という、そんなリタイヤ組ばかりではありません。

ハワイにビジネスチャンスを見出そうとする若者や、成功を収めた後に好きなハワイに移り住み、本当にやりたかったことや好きなことを始めるという、そんな“成功後に好きなことin HAWAII”を実践する人々も増えつつあります。今回紹介する小さなカフェを始めたこの人も、そんな中の一人です。

スターバックス創業者がマノアに開いたカフェ

ワイキキから車で約20分ほど山に向かった場所に、マノアというエリアがあります。

緑の渓谷に囲まれた静かなこの場所の一角にあるのが、以前はDUCKY‘Sという焼肉店を改造した、座席数30程度の小さなカフェ、「MORNING GLASS COFFEE+CAFE」。

それまで観光客にはあまり馴染みのなかったこの場所で、このサイズ。しかも土地代の安くないマノアで商売になるのかどうか。OPEN当時「1年続くかどうか」と、そんな冷ややかな目で見ていた人も多かったと思います。


派手な看板もく、いわゆるハワイっぽいお店の外観でもない。シンプルな作りがいいんです。


マノアに行ったならマノアのトレッキングコースへも是非。森林浴しながら歩いた先には滝が待ち受けています。

ところが予想に反し、「MORNING GLASS COFFEE+CAFE」は大成功を収めます。地域の住民やハワイ大学マノアキャンパスの学生達に加え、噂を聞きつけてわざわざワイキキからやってくる観光客も増え、現在でも常に満席状態という人気ぶり。

ここまで人気となった理由は、店名にもその文字があるようにコーヒーの味が評判となったから。


MORNIG GRASSになる前に営業していた焼肉屋さん。ほぼそのままの姿で使っていることがおわかりだと思います。絵に書いたようなミニマムスタートです。

マフィンやサンドイッチ、エッグベネディクトなどの軽食も人気ですが、なによりコーヒーの味が美味しいんです。

一杯一杯スタッフが丁寧に入れるコーヒー。淹れたての味と香りが、ハワイのコーヒー好きな人々の間でたちどころに評判となり、お客がお客を呼び大盛況となっていったのでした。


「うちはちゃんとドリップで淹れてますよ」、とさり気なくアピアール?


地元の人々にはマフィンが人気なようですが、個人的にはキッシュがオススメ。

この店のオーナーのエリックさん、実はスターバックス創業者メンバーの一人という、大成功者です。

アメリカ本土からハワイを訪れるうちに「すっかり気に入り、移り住んできた」というようなことをいろいろなところで語っています。・・・という話を聞いて、「スタバの創業者という肩書があれば成功するのは当然」と、そう思っているとしたら大誤解。

実は開店当時、彼を取材したことがあるのですが、そのような話は一切聞かされなかったし、むしろその逆。今考えれば敢えて隠していたようにさえ思えます。

なぜヒットしたのか?“ハワイ”だからこそ受け入れてもらえるスタイルがある

ハワイにやって来た当初は、既存のお店や新たに開店を考えている人たちのコンサルをしていたエリックさん(スタバ創業者にコンサルをしてもらえるチャンスがあるというも、ハワイの人脈とネットワークのサイズがそれを可能にしたのだと思います)。

しかし、おそらくコンサルをするうち、彼の創業魂に火が着いたのでしょうか? ハワイの中でも特に気に入ったというマノアに、一杯ずつ丁寧にブリューイングしてコーヒーを提供するという、ある意味スタバとは対極のスタイルの「MORNING GLASS COFFEE+CAFE」を開業したのでした。


本日のおすすめコーヒーの中には必ずハワイ産のコーヒーが加わります。

30年近く前、とある雑誌でシアトル取材に行った際に「急成長しているコーヒーハウス」と連れて行かれた、パイクプレイスマーケットのスターバックス一号店。

まだ日本にスターバックスが入ってくる前のことです。今思い出してみれば、シアトルの店は「MORNING GRASS COFFE+CAFE 」のように、お客とスタッフとの距離が近かったような気がします。


実は先の店頭写真は開店当初に写したものでこちらが最近撮影したもの。店の前にテラスまでお客があふれるのは既に日常の光景です。

ここ数年、ハワイで流行っている飲食店に日本の企業が目をつけ、日本で開業させるのが流行っています。

実は「MORNING GLASS COFFEE+CAFE」もその流れに乗り(乗らされて)、大阪で開業。しかしながらわずか数年で撤退。マノアよりよほど立地が良く、マーケットも大きいというのに、です。

その他にも“49ers”“モエナカフェ”“Roy’s”・・・多くのハワイの名店が日本に進出“させられ”ては、撤退していきました。単に流行っているからというだけの理由で日本に持ってきたとは思いたくありませんが、ではしかし何故続かない店が多いのか?

ハワイという狭くて競争の激しい場所で個人店を続けていくには、オーナーのお店に対する思い入れやフィロソフィーが明確(もしくは古くからの名店で固定客が着いている老舗。もしくはとにかく安いとかボリューミーだとか)な店でなければ、続けることが難しいというのは、ハワイの人にとっては常識です。

「ハワイで人気だから儲かるはず」と日本に持ってきたところで、どうなんでしょう?お店をやる人の思い入れや哲学がなく、あるのは金勘定だけだとしたら・・・当然上手くいくわけがないし、元よりハワイに失礼だと思うのですが、皆さんはどう考えますか?

取材・文:山下マヌー