LINEはスマホから投資ができる新サービス「LINE証券」を開始した。8月20日にはAndroid版、8月26日にはやや遅れてiPhoneにも対応し、広く普及するLINEアプリに株式を売買できる機能が加わった。


スマホから投資ができる「LINE証券」がスタート

最近では「老後資金に2,000万円が必要」との金融庁の報告書が話題になったように、資産形成への関心は高まっている。多くの証券会社がスマホ対応を進める中、LINE証券はどのようにしてスマホ世代を取り込もうとしているのか。

日本株を1株単位で売買、夜間取引も

スマホから投資ができるサービスは続々と増えている。中でもネット証券大手のSBI証券による「SBIネオモバイル証券」や、ソフトバンクが出資する「One Tap BUY」は少額投資を売りにしている。そこへLINEも参入した形だ。

LINE証券で取引できるのは主要100銘柄の日本株に限られる。だが1株単位で売買ができ、株式市場が開いていない昼休みや夜9時までの夜間取引にも対応する。注文を出せば即時に売買が成立するなど、株式市場を通した現物株の取引よりも利便性が高い。


LINE証券では主要100銘柄の日本株を売買できる


株式市場が開いていない昼休みや夜間にも取引が可能

背景には株式の「相対取引」の仕組みがある。取引所では売りと買いの注文がマッチすることで売買が成立するのに対し、LINE証券は自社で保有する株を顧客との間で相対取引する。

そのため取引所の売買単位である100株にとらわれず1株単位で取引ができ、売買も即時に成立するというわけだ。


100株の売買単位にとらわれず、1株単位で売買できる

これはLINE証券がターゲットとする「働く世代」に便利な仕組みだ。株式市場が開いている時間は仕事をしており、株取引をしている余裕はない。注文を出しても、いつ、どれくらいの価格で成立するかは予想しにくい。100株という売買単位も、銘柄によっては数百万円が必要になりハードルは高かった。

LINEの月間アクティブユーザーは8,100万人で、うち7,000万人が毎日LINEを利用しているという。この巨大なユーザー基盤を背景に、スマホからアクセスできる扱いやすい金融サービスを提供する「金融の民主化」を、LINEは狙っている。

長期的な資産形成に向けた入り口として

LINE証券ならではのメリットがある一方で、気になる点もある。それはLINE証券が提示する「株価」にスプレッドが乗っている点だ。

LINE証券は、株式市場での価格よりもわずかに高く株を販売し、わずかに安く買い入れることで、利ざやを稼いでいる。他のサービスが課しているような売買手数料がない代わりに、このスプレッドが実質的な手数料になっている。

現在のスプレッドは0.5%程度で、One Tap BUYと同水準だ。これが高いかどうかは、1株単位で売買できるなど通常の株取引にはないメリットをどう評価するかによるだろう。LINEは投資初心者だけでなく、経験者にとっても単元株未満で売買できることをメリットに挙げている。


LINE証券のメリット

他サービスと比べたLINE証券の強みは、高い普及率を誇るLINEアプリにありそうだ。毎日何度も開くLINEアプリに証券サービスが自動的に追加され、ユーザーの目に触れることになる。本人確認の必要もあり、思い立ったら即日株を買えるわけではないものの、ハードルは限りなく低くなっている。

その先には本格的な投資へのステップアップも見えてくる。LINE証券に共同出資した野村ホールディングスは「新たな潜在顧客を取り込むことで、1,800兆円の個人貯蓄から資産形成への流れが加速するのではないか」と期待感を語っている。

「老後に備えて2,000万円が必要」と急に言われても、誰もが資産形成に向けた準備ができているわけではない。金融リテラシーを高める学校教育の必要性も徐々に認識されているとはいえ、多くの人は試行錯誤しながら、ときには痛い目にあいながら学んでいるのが現状ではないだろうか。

だがLINE証券なら3,000円から買える株も取り揃えるなど、小さく始められる。個別株以外には国内外のインデックスや商品相場に連動するETFも用意されており、幅広い投資を体験できる。今後はNISAやiDeCoに対応したサービスも期待される中で、まずは最初の一歩を踏み出したといったところだろう。


LINE証券は今後も第2、第3のサービスを投入予定としている

取材・文:山口健太