昨今、新しいスタートアップ企業が次々と現れ、新しいサービスを展開している。
様々なサービスが展開されていく中で、ビジネスを起案する際、どのようにアイデアを出していくのだろうか?

今回は、そんなビジネスにおけるアイデアの発想方法に迫るべく、本格的に事業をスタートさせてわずか4ヶ月でサービスをローンチした、株式会社ユースラッシュ 代表取締役 内山裕規氏へ取材。

同社がローンチを発表したシェアオフィスのマッチングプラットフォーム「JUST FIT OFFICE」を軸に、サービスの生み出し方やアイデア発想のヒントについて話を伺った。

“時代背景を逃さない。” タイミングを重視した決意が事業のスタート

内山氏が株式会社ユースラッシュを本格的にスタートさせたのは2018年12月のことだった。
2005年にマザーズ上場企業で、インターネットメディア事業全体を統括する取締役に就任。2014年にはアリーステージ企業に経営参画する。このように、ユースラッシュを立ち上げるまでの13年間、経営層として企業に参画していたものの、自分自身で事業を生み出し会社のトップになろうと考えていなかったと語る。

内山氏「学生時代から漠然と会社の経営に関わりたいと思っていました。とはいえ、会社のトップとして一から事業を生み出すのではなく、誰かの作った事業に関わりながら、自分の実績を残して行きたいと考えていました。
でも、いざそれを実現した時、今度は自分の手で事業を生み出したいという欲が出てきたんです」

この想いから起業を決意。起業当初は同氏が当時やりたいと考えていたアプリ関連の事業を進める予定だった。
しかし、とある出来事を皮切りに現在ユースラッシュが提供する「JUST FIT OFFICE」事業の開発をスタートすることとなった。

内山氏「起業して少し経ったタイミングでオフィス探しを始めました。いざ探し始めるとこの“オフィス探し”が、自分の中でとても“無駄な時間”だと感じたんです

最近では様々なシェアオフィスやコワーキングスペースが進出している。2018年9月時点における、東京都内のコワーキングオフィスは346拠点という市場規模だ。ところが、これらのスペースに共通しているのが、WEB上でスペース内の設備や金額といった欲しい情報の開示が極めて少ないということ。

内山氏「内覧して駅からどれくらいの場所に位置するのか、どんな設備があるのか、どれくらいの初回の支払額がかかるのかが初めて理解できる。当時、私は6箇所のスペースを回りましたが、内覧開始10分で自分のイメージと違ったと思う場所もあって。にも関わらず、小1時間スペースの説明をしてもらうこともありました。
そういった体験から、WEB上で詳細な情報が見れて、本当に興味のあるスペースを選定した後に内覧できれば、こんな状況にならないと感じたんです」

家の賃貸であれば、数多くのプラットフォームが既に存在する。自分の希望する条件を入れて絞り込み、気になった物件の賃貸情報を見て内覧するか検討ができる。一方、シェアオフィスやコワーキングスペースに関してはそういったプラットフォームがなかったのだ。

内山氏「とはいえ、シェアオフィスやコワーキングスペースの市場規模はどんどん拡大しています。最近では、不動産企業から不動産に関係ない大手企業までマーケットに参入している。この事業をするのは今しかない、そう考えて市場に参入することを決意しました」

大手企業が参入する可能性は十分にあった。だからこそ、スピード感を持って事業を進め、若干4ヶ月というスピードで「JUST FIT OFFICE」のβ版リリースにこぎつけたのだ。

シェアオフィスのマッチングプラットフォーム「JUST FIT OFFICE」とは

そんなJUST FIT OFFICEとは、どのようなサービスなのか。

内山氏「一言で表すと、“シェアオフィスのマッチングプラットフォーム”です。シェアオフィスやコワーキングスペースを中心としたオフィス探しができるプラットフォームサービスとなっています」


JUST FIT OFFICE ウェブサイト

同サービスは、小規模な法人やフリーランス、副業者、テレワーカーなど、比較的ワークスタイルの選択が自由な人たちがターゲットだ。
ワークスタイルに合った軸でオフィス探しが可能となっている。

検索方法もシンプルな手順である。

① エリアと利用人数(入居人数)の2項目を入力し検索
② 社員数に応じた賃料や初回支払額から比較検討
③ 立地、賃料や広さ、初回支払額などの詳細情報から比較検討
④ 気に入った物件をまとめて内覧申し込み

内山氏「シェアオフィス、コワーキングスペース施設のWEBサイトよりも充実した情報を掲載しています。
必要な設備の選定をしやすくしたり、入居予算と許容人数をもとにした将来の人員拡大も踏まえたオフィス選びを簡単にできるようにしました。検討するオフィス施設がどこに優位性を持っているのか、すぐにわかるようなUI/UXになっているんです」

同サービスを利用することで、シェアオフィス、コワーキングスペースの物件を探しているユーザーがワークスタイルに合ったオフィスを探せる一方、運営側にも導入するメリットがあるという。

内山氏「運営側の無駄な集客コストの発生が防げると考えています。
同サービスに物件や施設情報を登録しておけば、入居促進したい部屋やスペースにピンポイントで集客が可能ですし、満室や入居済みスペースに対する無駄な集客コストが発生しません。また、ユーザーは詳細な情報を比較検討した上で内覧の申込みをするため、内覧後の商談もスムーズに進む。集客コストだけでなく、内覧当日の説明コストも省けます」

現在、同サービスは物件の登録や掲載が無料だ。内覧申し込みが決まったタイミングでフィーをもらう成果報酬型の料金形態となっている。(もちろんユーザー側は無料で利用可能。)

今後は、シェアオフィスだけでなく賃貸オフィスも追加し、より幅広い中からワークスタイルに合った比較検討できるようにするそうだ。

“誰でも簡単に”を実現させた工夫の数々

4ヶ月でここまでのサービスを作り上げた内山氏だったが、短い期間ながら試行錯誤を繰り返したと話す。

内山氏「UI/UXにはかなり悩まされましたね。どんな項目で検索ができれば、ユーザーにとって使いやすいのかはとても考えました。従来のオフィス検索サービスは、“坪数”と“賃料”が検索条件というのがほとんど。でも実際、坪数なんてパッと分からないじゃないですか。3坪って言われても、どれくらいの広さなのか思い浮かばない」

そう考えた内山氏は、“坪数”と“賃料”の掛け合わせではなく、“エリア”と“利用者数”を掛け合わせた検索条件にすることで、簡単に検索できるような仕組みを生み出した。

また、検索結果の表示にも工夫を凝らしたと述べる。

内山氏「金額を含め、できる限り詳細な情報を開示することは意識しました。
多くのオフィススペース運営側は賃料や詳細な設備情報の開示をしていない。内覧して初めて把握できる。しかし、シェアオフィスやコワーキングスペースの利用者は、基本的に小規模の企業や個人だからこそ、金額面や設備に関してはかなりシビアに考えていると思うんです。」

そのため、検索結果には月額の賃料と初回支払額を記載。まず自分たちの状況に合った金額で検討が可能なのだ。さらに賃料や詳細な設備情報だけでなく、オフィス内の写真を掲載したり、最寄駅周辺の施設を記載することで、オフィスに入居した後のイメージがつきやすいのも、誰でも簡単にオフィス検討ができるための工夫だと感じられる。

サービスを生み出すヒントは「ニーズの隙間」を見つけること

JUST FIT OFFICEというサービスは、様々な角度から課題やヒントを得て、作り進めている。初めてサービスを一から作っているにも関わらず、どのようにアイデアを出していったのか。

そんな問いを投げかけた時、「ニーズの隙間」を見つけることが重要だと内山氏は語った。

内山氏「明確な課題があって、そこにまだ誰も手を打っていない、そのニーズの隙間からサービスを生み出せばいい。さらに、ここでもう一つ意識すべきは、“誰に向けてサービスを作るか”ということです」

ニーズの隙間はどこにあるのか、そのニーズを感じているターゲットは誰なのか、この2つを把握することが重要。
そして、この2つを網羅する思考のヒントは“自分がターゲットになること”だと言うのだ。

内山氏「自分が必要だと感じたものを作る、ただそれだけなんです。自分自身が課題に感じていれば、顧客の視点に立っていれば、サービスを生み出せる。自分の身近にある課題をどれだけスピードを持って解決できるかが肝心です」

ニーズや課題を汲み取ったらまず進めていこうと、そんな考えがあったからこそ4ヶ月というスピードでサービスをローンチさせたのだ。ニーズや課題をどんな方法で解決させるかはあえて決めすぎず、効果検証しながら焦点を合わせ、手探りでもいいから進めていく方がリスクが少ないそうだ。

内山氏「最初からガチガチに決めて時間もお金も投資し過ぎたのに、上手くいかない可能性は十分にある。効果検証をしながら波に乗ってきたタイミングで一気にスケールさせる方が、リスクは最小限に抑えられますよね。

昔と違って今は起業がしやすい時代です。チャレンジしやすい時代だからこそ、まず進めていく。仮に上手くいかなかったとしても、進めたことには価値があるから、次に繋げていく。事業を作ることはその繰り返しなんじゃないかと思ってます」

最適なオフィスが見つけられるサービスを目指して

現在、JUST FIT OFFICEではオフィススペースの登録が50スペース以上となっている。
β版をローンチした4月時点では40スペースだったため、数週間の間で登録スペース数が増え続けているのだ。
ローンチしたことをキッカケに、毎日数件の申し込みが入るのだそうだ。今後もさらにスペース数を拡大させていきたいと言う。

内山氏「今年の秋までに100スペース程度まで増やしていくことが目標です。スペース数がなければ比較もできないため、ユーザーを増やすことよりもスペースを増やすためのリーチを意識しています。また、現在は都内のスペースのみ掲載してますが、7月に予定している本ローンチには横浜、大阪、福岡エリアのスペースも掲載予定です。主要都市だけでなく、地方展開も考えてます」

総務省が推進するテレワークの影響で、地方にオフィススペースを展開する大手企業も増え始めている。増加傾向にある一方で、地方では都市部と田舎での入居者の格差が課題になっている。そういった課題の解決にも同サービスは有効だ。

オフィス探しの様々な課題を解決してくれそうなJUST FIT OFFICE。
最後に同サービスにかける想いを伺った。

内山氏「2~3年で小規模な法人やフリーランス、副業、テレワーカーのオフィス探しで独占的なシェアを獲得する事を目指しています。そこに付随して、登録するオフィススペースには掲載条件を設けません。どのスペースでも登録ができるようにします。掲載条件を設けることで、一定の範囲内でしかオフィス探しができなくなってしまう。そうではなく、JUST FIT OFFICEを利用したことで、自分の想像を上回るほどマッチングしたオフィスと出会ってほしい。

そのためにも多くの個性溢れるオフィスを比較して、組織業態、組織文化、ワークスタイルに最適なオフィスを見つけてもらえるようなサービスを目指していきます」

取材・文:阿部裕華
写真:西村克也