13億5000万人、中国に次ぐ人口を有するインド。高度IT人材を多く輩出するIT大国と呼ばれていたが、これまで民間・産業ドローン分野では目立った動きはなく中国の躍進に鳴りを潜めていた。

その主な理由は、インド政府が産業ドローンの飛行を全面的に禁止していたためだ。そのためドローン企業の立ち上がりは勢いを欠き、投資資金の流入は乏しく、中国のようなエコシステムが醸成されてこなかった。

しかし、インド政府はこのほど産業ドローンの新政策を発表、2018年12月から施行することを明らかにした。

BIS Researchは、インドのドローン市場は2021年に8億8,570万ドル(約1,000億円)に達すると予想している。先行する中国にように、監視、デリバリー、産業用途での需要が大きく伸びるという。

またインドは、国全体の労働力の50%、GDPの18%を農業が占めているが、生産性の低さが大きな課題となっている。農業へのドローン活用が広がれば大幅な生産性の改善が予想される。

インド政府が12月から施行する新ドローン政策は、どのようにインドのドローン産業を醸成していくのだろうか。


インド・ドローンスタートアップAarav Unmanned Systemsウェブサイト

インド・ドローン産業活況の足がかり「インド・ドローン・ポリシー1.0」

2018年8月にインド政府が発表したドローン政策「インド・ドローン・ポリシー1.0」。

インド地元紙エコノミックタイムズは、インドでも中国製のドローンがシェアの大半を占めている現状を考慮し、ハードウェアではなくソフトウェアでインドのドローン産業を拡大することを目指す政策と説明している。

この政策ではドローンの種類や飛行条件を規定。250グラム未満を「ナノ」、250グラム〜2キロを「マイクロ」、2〜25キロを「スモール」、25〜150キロを「ミディアム」、150キロ以上を「ラージ」とし、ナノは高度15メートル以下であれば登録・許可なしで飛行することが可能だ。

マイクロ以上は機体の登録と飛行許可の届け出が必要となる。また基本は目視による日中の飛行のみが許可され、パイロットは当局が認定するトレーニングを受けた者に限定されている。

インド・ドローン・ポリシー1.0は、海外の規制に比べ少し厳しいと見る専門家もいるが、ドローンの登録と飛行申請の一元化を可能とするデジタルプラットフォーム「Digital Sky」が導入されることになっており、これによりドローンデリバリーや空飛ぶタクシーなどより複雑なドローンインフラを安全に運用できるようになるという期待が持たれている。

ドローン運用者は、スマホアプリなどからDigital Skyプラットフォームにドローンを登録、用途に応じた飛行許可も申請することが可能という。飛行許可申請は民間や軍の航空管制情報などを基にその可否が伝えられることになっており、Digital Skyはドローンの管制システムとしての役割を担うことになる。


インド・ドローンスタートアップIdeaForgeウェブサイト

インドのベンチャーキャピタルExfinity Venturesの代表バラクリシュナン氏は地元メディアYourStoryの取材で、これまでインドでは産業ドローンを対象とした規制やルールがなく、ドローンへの投資をためらう投資家が多かったが、インド・ドローン・ポリシー1.0の登場で、インドのドローンスタートアップは投資家から資金調達をしやすくなるだろうと述べている。

YourStoryによると、インドではこれまで35社ほどのドローンスタートアップが立ち上がったようだが、資金調達が難しく、事業をスケールできたのはIdeaForgeとAarav Unmanned Systemsの2社のみだったという。

2018年12月インド・ドローン・ポリシー1.0の施行で同国のドローン産業はどのように変わっていくのか、今後の展開に注目が集まる。

文:細谷元(Livit