2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。

最新のSDGsの達成度ランキングで加盟国156カ国中、日本は15位と、昨年の11位から順位を落としている。

採択から3年、いまだSDGsにどう取り組むべきか模索する企業も多いなか、「SDGs宣言」を行う企業が地方からも出てきた。

SDGsと経営理念の合致

石川県に本社を置く、国内トップシェアのパーティション製造メーカー、コマニー株式会社は、2018年4月に「コマニーSDGs宣言」を表明、同年9月28日に「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」を制定した。

「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」は、同社の事業を社会貢献できるビジネスモデルとして明らかにし、視覚的・感覚的にわかるよう示したリンケージ図だ。

「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」は以下のように構成される。

  1. プロダクト・サービス
    SDGsの達成に向けて、各市場(オフィス、工場、病院、病院・福祉施設、学校、公共施設)における社会課題解決に向け、産学連携での研究と商品開発を通じて社会的インパクトを創出していく。
  2. ガバナンス
    同社に関係するすべてのステークホルダー(従業員、取引先、株主・投資家、地球環境、地域社会)に対しても積極的な対話を通して幸福度向上にむけて施策に落とし込み、「誰一人取り残さない」経営を実現することを目指す。
  3. レバレッジポイント(起点となるポイント)
    1と2を持続的に循環させ、向上させる「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」を推進させ、機能させることを通じて企業価値向上を実現し、雇用創出など地方創生にも寄与していく。

コマニーはSDGsが採択される以前から、持続可能な社会への実現に向けて活動を展開していたという。「SDGsのアジェンダに記されている『大きな自由における普遍的な平和の強化を追求する』ことは、私たちコマニーが目指す経営の理念『全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する』を実現することと繋がっています」と、今回の取り組みの背景について述べている。

SDGsと企業理念が合致していることが、事業戦略に落とし込む秘訣と言えるかもしれない。

ストロー1本からできるSDGsへの取り組み

事業戦略というと大きな話に聞こえるが、SDGsへの取り組みは自社で使用する製品ひとつから始められる。

「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」では、2018年12月までに全てのレストラン・宴会において、使い捨てのプラスチックストローの使用を取りやめ、環境に優しい「生分解性ストロー」に変更すると発表した。

このストローは、とうもろこしなどのでんぷんから得られる植物由来の新しい樹脂を原料とし、使用後に微生物の働きによってコンポスト化が可能。仮に焼却されても有害物質が発生せず安全だ。

このホテルの取り組みは「環境」に関するターゲットにあたるが、SDGsは17の大きな目標と、この目標を達成するために設定された169のターゲットによって構成される。

貧困(1)や飢餓(2)、安全な水(6)というと開発途上国に関するもののように思われるが、エネルギー(7)や働きがい(8)、気候変動(13)などを見てくと、先進国も含めた全世界的な課題であることがわかる。

特に、まちづくり(11)やつくる責任・つかう責任(12)などといったところは、ものづくり企業、地域企業にとっては切り離せない。

さらに詳細な169のターゲットを軸に、各企業の細やかな部分まで見ていけば、「ストロー」のように各企業が取り組むべき、もしくは、すでに取り組んでいる内容に落とし込むことができるだろう。

SDGsを軸に企業理念と向き合う

ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルでは、1999年から、環境保護や地域社会に貢献することを目的とした取り組みを実施してきた。コマニーも前述のとおり、企業理念とSDGsが合致している。

企業理念、そして社員ひとりひとりにすでにSDGs的精神が宿っていたことで、事業や製品への落とし込みがスムーズにいったと言えそうだ。

SDGsに向けて新規事業を考えなくてはいけないと構えるのではなく、これまでの事業を振り返る機会と捉えることが、SDGsへの取り組みの第一歩となるかもしれない。

img:PR Wire