社会では副業に対する意識に変化が起こっている。政府の後押しはもちろんのこと、働き手の意識の変化やインターネットなどのテクノロジーの進化が副業従事者の増加に拍車をかけている。これにともない、従業員の副業を解禁する企業も増加している。

では、副業従事者の実態はどうなっているのだろう。楽天インサイト株式会社は、「副業に関する調査」をインターネットで実施した。その結果、有職者の約3割が「副業経験あり」と回答したという。

約3割が副業経験あり

まず、回答を得た有職者1,000人に副業経験があるかを聞いたところ、「現在副業をしている」と回答した人は14.1%、「過去に副業をしたことがある」は16.6%、「副業をしたことがない」は69.3%となり、約3割が副業を経験したことがあるという結果となった。

続いて、現在副業従事者に、副業内容を聞いたところ、「投資(株式、不動産、仮想通貨など)」(13.5%)と回答した人が最も多く、次いで「接客・販売」(9.9%)、「不動産運用」(9.2%)、「ネットオークション・フリマアプリによる販売」(9.2%)となった。

「ネットオークション・フリマアプリによる販売」が「不動産運用」と同率3位に入っており、インターネットの進化が副業に大きな影響を与えていることがわかる。また、トップの「投資」のカテゴリーにも仮想通貨が入っており、これらITの進化は副業のあり方を大きく変えているようだ。

現在副業をしている人に、副業をしている理由を聞いたところ、「給料が足りないため」(47.5%)と回答した人が最も多く、次いで「趣味、生きがいのため」(36.9%)、「仕事がなくなったときの保険のため」(17.7%)となった。

やはり、その目的は「生活のため」であることがわかった。ただし、2位の「趣味、生きがいのため」も10.6ポイント差と肉薄しており、そこに生きがいを見出してる人も多いようだ。

副業の頻度を聞いたところ、「毎日」と「2~3日に1度程度」と回答した人がそれぞれ最も多く22.0%で、「1週間に1度」以上が約7割を占めた。

これは、職種のタイプにもよるだろうが、まだ、その頻度は少ないようだ。

そして、副業で得られるひと月あたりの収入を聞いたところ、「30,000円~50,000円未満」が15.6%で最も高く、「100,000円~500,000円未満」(14.9%)、「50,000円~100,000円未満」(12.8%)が続いた。中央値(データを大きさの順に並べた時、中央に位置する値)は「20,000円~30,000円未満」だった。

副業しない理由は「時間がないから」

会社の人(同僚・上司・人事)が副業をしていることを知っているかどうかを聞いたところ、「知っている」が54.6%、「知らない」が45.4%だった。

現在副業をしていない人(「過去に副業をしたことがある」+「副業をしたことがない」)に、副業をしていない理由について聞いたところ、過去副業経験者は「体力的に余裕がないから」(47.6%)が最も高く、「時間がないから」(43.4%)、「やりたい副業がないから」(19.3%)が続いた。

副業経験者、未経験者ともに本業が忙しすぎるからということだろうか。

また、副業未経験者は「時間がないから」(34.2%)が最も高く、「会社で禁止されているから」(32.9%)、「体力的に余裕がないから」(28.6%)が続いた。

副業解禁する企業が増えているとはいえ、まだ、禁止の企業も多いようだ(これについては次項でふれる)。

そして、現在副業をしていない人(「過去に副業をしたことがある」+「副業をしたことがない」)に、今後副業をする意向について聞いたところ、過去副業経験者では56.0%が意向あり(「したい」+「まあしたい」)と回答した。

過去副業未経験者に関しては、副業の意向(「したい」+「まあしたい」)があると回答した人が41.4%いた。過去副業経験者のほうが、副業意向が高い結果となった。

副業への意向を持つ人が多いが、まだ、余裕がないということか。これについては、今後、「働き方改革」が進むにつれ、余裕も生じてくるだろう。

過渡期にある企業の副業解禁

プロフェッショナルスキルで働きたい人材と、即戦力を求める企業を「副業」を通して繋ぐサービス「プロの副業」が実施した調査によると、副業を解禁している企業は着実に増加傾向にあり、約4年で2倍以上に達しているという。

2014年度の中小企業庁の調査「兼業・副業に係る取組み実態調査2014年」によると、2014年当時、副業を認めている企業はまだ15%にも満たない結果だった。

これに対し、この調査では、2018年2月現在、36.3%が「現在働いている企業では副業が認められている」と回答しており、2014年に比べ、副業を解禁している企業は着実に増加傾向にあり、約4年で2倍以上に達していることがわかる。

ただし、現在でも「副業NG」の企業は51.3%と半分以上を占めており、旧来の考え方を変えない企業もまだ多いのも事実だ。

企業側からする、副業に集中されて本業がおろそかになってしまっては困る、という考え方が主流なのだろう。

しかし、最近では副業ができるほどの能力や余裕がなければ、本業で成果を出すことも難しいと考える企業もあるため、まさに今は過渡期といったところだ。

先を見据えたビジョンのもとに進めることが大切

今回の調査では、多くの人が副業に従事しており、また、現在は従事していなくても、今後、多くの人が高い意向を持っていることわかった。

しかし、副業を行うには本職側の対応だけではなく、ビジネス環境の整備や資金の問題もある。

今後、高齢化が進むなか、企業人にとって副業は定年後の身の振り方の選択肢の一つになる考えられるため、先を見据えたビジョンのもと進めることが望ましいと思われる。

img:楽天インサイト