「働き方改革」の浸透やミレニアル世代の台頭などにより、「働き方」の形が大きく変貌している。

これまでの、企業従属型から、リモートワークやフリーランスといった形態が増加している。そこで、問題となっているのは働き手の健康管理の問題だ。

たとえばこれまでのような企業従属型であれば、所属企業による定期的な健康診断や企業の診療機関などで、自身の健康管理は比較的容易に行えていた。しかし、組織から離れた形態の働き方、とくに専業フリーランスの場合、それはなかなか難しいのが現状だ。

これを受け、フリーランス総合支援プラットフォームを提供するランサーズ株式会社は、Carelyを提供する株式会社iCARE、スマホdeドックを提供するKDDI株式会社、おうちでドックを提供するハルメク・ベンチャーズ株式会社などのヘルスケア企業と連携し、フリーランスのヘルスケア・健康診断サポートを開始した。

これは、個人の株式会社化を実現する「※Freelance Basics」のヘルスケア分野の提供を拡充したもの。

※Freelance Basics
法務や経理などのバックオフィス機能、個人“事業主”としての経営管理、セーフティーネット、キャリアアップ教育などを対象としたフリーランスと会社員の差分をなくす新型インフラサービス群である。

ヘルスケアや健康診断、その他予防医療など企業における労務分野のサポートをするフリーランス向けサービスを提供する。

フリーランスにとって必要な補償・保険の整備を

このサービスでは、まずはストレスチェックや医療系の相談窓口を設置するほか、健康診断や人間ドックの予約・実施サポートを開始する。

開始のきっかけとなったのは、ランサーズが実施した広義のフリーランスを対象に「フリーランスの健康に関する意識調査」である。この結果によると、専業フリーランスにおける1年以内の健康診断未受診率は半数を超える58%という結果になった。

また、人間ドックにおいては、未受診率は91%という高さとなったという。これらの健康診断未受診の理由として、「手続きの面倒さ」が34%と最も多く、次いで「必要性が感じられない」「やり方がわからない」ことが挙げられている。

また、健康に関するリスクについては、51%以上が備えられていないこともわかった。このため、同社は予防医療の周知の必要性やフリーランスにとって必要な補償・保険の整備が急務と考え、サービス開始に至ったという。

新サービスは「Freelance Basics」ヘルスケアパックに加入することで提供される。具体的なサービス内容は以下のとおり。

  • オンラインストレスチェック(月1回) 
  • 医療系各種専門家への相談(無制限)
  • 健康診断運用サポート 
  • 郵送型生活習慣病チェックサービス(スマホdeドック)
  • 郵送型がん・生活習慣病チェックサービス(おうちでドック)

提供サービスとしては、まず、ヘルスケア専門家相談プラットフォーム&ストレスチェックサービス「Carely」がある。Carelyには、医師や看護師、保健師、カウンセラー、トレーナーなどがオンラインで待機しており、健康に関する相談やアドバイスを受けることができる。

また、Carelyは、労働安全衛生法で設けられた制度「ストレスチェック」の検査機能を有している。「ストレスチェック」などのパーソナルな健康データをもとに、医師や保健師などの専門家にチャットで健康相談することもできる。

また、「スマホdeドック」は、専用の在宅検査キットと、スマートフォンやパソコンから検査結果を確認できるWEBサービスを組み合わせたサービスだ。子育て中の専業主婦や自営業者など健康診断を受診する時間をとることが難しい人でも、気軽に素早く健康チェックを行うことができる。

2015年4月より、「生化学14項目血液検査サービス」、2017年1月より「胃がんリスクチェックABC分類」の提供を開始している。

血液検査サービスでは、専用の検査キット「デメカル血液検査セットFF」を用いて0.065mlという微量の血液を採取し、専用検査センターに郵送すると、約一週間後にWEB上のマイページから、糖尿病の指標などを含む14の検査項目結果を確認することが可能だ。

さらに、検査結果に対する医学的見地からのコメントや、悪化要因・改善ポイントに関するアドバイス、自宅近くの病院や、疾患リスクのある病気に関する正しい情報を検索することができる。

郵送型人間ドックがん検診「おうちでドック」サービスは、自宅で数滴の血液と尿を検査して、がんや生活習慣病を調べることができる郵送型検査キットだ。

疾病のリスクチェックの検査結果のほか、同年代と比較して、今の自分のカラダの状態を表す健康年齢(R)も提示してくれる。検査結果は医師から直接解説し、理解を深め、予防意識を高めるきっかけを作るという。

今後増加するフリーランスの健康管理促進を

筆者の幼馴染に美容院を経営している美容師がいる。一人で店を運営しているため、非常に忙しく、少々具合が悪くても病院に行く暇がない。

しかも、これまで企業や組織に属したことがなく、学校を卒業してから何十年間もいわばフリーランスという立場で働いている。このため、何十年も健康診断を受けたことがなく、周囲の人間を心配させている。

一方、筆者もフリーランスであるが、自身で定期的に行きつけの医院で健康診断を受診している。しかし、今回の調査結果にもあるようにそれは、面倒でとくに「人間ドック」などは時間もお金もかかり、なかなかその気になれない。

このようなフリーランスにとって、今回のサービスの登場は非常に歓迎すべきことだ。

人間の基本はなんといっても「健康」だ。今後、ますます増加するであろうフリーランスのためにもこのサービスが成功し、定着することを願う。

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