近年ミドル世代の副業によるパラレルキャリアの動きが活発化している。ビジネスパーソンとして働き手の中心にいる世代に、価値観の変化が生じている。旧態依然とした定年まで一つの会社に長期に勤めることは今後なくなるかもしれない。ミドル世代にはミレニアル世代も含まれており、今後10年もすればミレニアル世代がこのミドル世代を形成していくことになる。

現在のミドル世代が今着目しているのは、副業を活用したパラレルキャリアの形成。これにより、副業の人脈を活かし本業に活かすことや起業して独立を果たすなどの選択肢の多様化があることが着目されている理由だ。

もう一つは、「リカレント教育」ミレニアル世代が今後働き手として出てくる中で、最新技術を中心に専門的に学びたいと渇望するミドル世代は多い。今までのやり方が通じないからこそ専門的に学び直す「リカレント教育」が注目されている。

ここでは、パラレルキャリアとリカレント教育の現在の状況と今後の展望を株式会社エン・ジャパンが行ったアンケートをもとに紹介しよう。

副業によるパラレルキャリア形成の実態と展望

時代の変化に伴いキャリアの選択肢は広がりを見せており、働き方の多様化は加速度的に上昇している。

最もその変化が顕著なのは、35歳以上のミドル世代と呼ばれるビジネスパーソンだ。1社だけで仕事を行うのではなく、自身でも副業を行いその知見や人脈を本業にも活かすパラレルキャリアを意識している傾向にある。

実際にエン・ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:鈴木孝二)が運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」上で、サイトを利用している35歳以上の転職経験のあるユーザーを対象に「副業(パラレルキャリア)」についてアンケートを行った結果、1,144名から有効回答を得られた。

調査結果では、実に3割のミドル世代が現在副業をしているという結果になった。年収に関係なく3割が副業を行っている。政府の副業解禁の流れも相まって、今後はさらに副業人口は増加する見込みだ。

しかし、ミドル世代の副業も年収1,000万円を境に目的が変化するようだ。同調査によれば、年収が1,000万円以下のビジネスパーソンは「報酬」が目的。一方、年収1,000万円以上は、「知見の広がり」と回答した。

また、実際に行っている副業に関しても「本業以外の単発の仕事」が半数近くを占め、その後「株式投資」「起業」「不動産投資」と続く。

これらはクラウドソーシングの普及により、副業や起業のハードルが下がったことにも起因するのだろう。それにより、自身のスキルアップも含めた副業や起業はミドル世代に価値観の変化に対応するという「知見の広がり」をもたらす結果となったのである。

ミドル世代の副業や起業は、今後も増加する見込みだ。それは、副業を行う5割のビジネスパーソンが本業でも役に立ったと回答しているためだ。本業でも成果が上がるならば、企業側としては無理に止めることはないだろう。

むしろ積極的に推進していき、普通の会社員ではなく、副業の人脈を活かしたエンジンとして捉えなければ優秀なビジネスパーソンは逃げていく。企業も価値観を変える時代が到来したと言えるだろう。

ミドル世代渇望の「リカレント教育」。価値観の変化に対応するための新しい教育とは

そんなミドル世代だが、やはり多くの人はまだ副業や起業に踏み切れていないのが現状だ。多くのミドル世代は価値観の変化には気づきながらも仕事に追われており、なかなか一歩を踏み出せない状況が続いている。

さらには、ミレニアル世代も今後は働き手の中心になる時代がやってくる。働き方・場所・価値観がすべて異なる中でミドル世代とのギャップは大きい。これらの多様性に今後はすばやく対応しなければならない。

しかし、現状では対応はが完全とは言い難く、ミドル世代は自身の仕事に追われていて最新技術などの勉強に割く時間が設けられないことも世代間のギャップを広げる一つの要因だろう。

そこで、注目されているのが、「リカレント教育」だ。このシステムは、安倍政権が提唱した「人づくり革命」の一つ。大学を卒業した社会人が生涯、学び直しを行うシステムである。


エン・ジャパン株式会社はミドル世代専門の転職サイト「ミドルの転職」上で「リカレント教育」についてのアンケートを行った。その結果としてビジネスパーソンの9割がリカレント教育を望んでいることがわかった。

リカレント教育は欧米が始まりで、個人の職業技術や知識を向上するために、フルタイムの就学とフルタイムの就労を交互に繰り返すことで個人の仕事に対するキャリアアップをするシステム。

キャリアアップして転職を行うのが通常であるという価値観の欧米の場合は、キャリアアップのために社会人になってから教育機関で学習するシステムを取り入れやすい状況であった。

一方、日本の場合は、長期雇用の慣行があるため、社会人になってから教育機関にもう一度戻って学習するというというシステムは馴染みにくい傾向にあるのが現状だ。しかし昨今は、キャリアアップのために学習をするという考え方が認知され始めた。

ただし、本来のリカレント教育の概念のように「正規の学生としてキャリアを中断して就学する」ことは依然として難しい現状があり、多くの場合は広義的解釈がなされ、仕事ではなく生きがいのために学ぶことが多いようだ。

同アンケートでは、学びたい内容は「語学力」、「経営の知識」、「専門的な資格の取得」の順であった。先述のアンケートにおいて3割のビジネスパーソンは副業を行っている経緯からパラレルキャリアの重要性に気づいての結果といえるだろう。

自身のスキルアップを行いつつ、起業や転職あるいは本業に活かすなど、さまざまなことを挑戦・選択するためにも、ミドル世代は「リカレント教育」に多大な期待をしているといえるだろう。もう今までのやり方は通じないことはひしひしと感じているのかもしれない。

ミドル世代が今後キャリアアップをしていくには

ミレニアル世代を指導する立場になるであろうこの世代にとって、部下の価値観が多様化しているからこそ、そのマネジメントも難しくなってきていることだろう。さらには自身の能力も高めていかなければ、今後のキャリアが不安だとも感じている。

パラレルキャリアやリカレント教育はミドル世代にとって、人生をより豊かにするための働き方の実現をもたらすだろう。

「報酬」以外の副産物やリカレント教育を上手に活用して、ビジネスパーソンとしてキャリアアップを行う時代はもう目の前まで来ているのだ。

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