新年度に入ってから1ヶ月がたち、GWを迎えている。社会で「働き方改革」が意識される中、各社からは「新入社員に関する調査」の発表が続く。

今年、新入社員となった人々の多くは「Z世代」に属する。1990年代後半から2000年前後に生まれた若者たちだ。ミレニアル世代と並び、デジタルネイティブで、新しい価値観をもった世代として注目されている。

Z世代の「新しい価値観」とは何なのか。それにもとづく「キャリア観」とはどういったものになるのか。企業は、どう対応すべきか。トーマツ イノベーションの調査結果から読み取ってみたい。

Z世代の「新しい価値観」と、それにもとづく「キャリア観」

2018年4月26日、トーマツ イノベーション株式会社は、2018年度「新入社員のキャリアに対する意識調査結果」を発表した。調査はアンケート形式で、同社が開催した新入社員研修の受講者4,863名を対象に、2018年4月3日~4月16日に実施している。

「今の会社で働き続けたいですか?」という問いには、「できれば今の会社で働き続けたい」が53.8%で、3年連続の減少となった。その分「そのうち転職したい」の割合が増えている。フリーランスの台頭などで「就社意識」が、ここ数年で大きく低下していることに注目できるのがZ世代の特徴といえるだろう。企業はメンター制度を設けて、仕事の醍醐味や体験談を伝えるなど、定期的なフォローアップが必要となりそうだ。

労働時間についての質問では、「定時に帰りたい」が42.0%で4年連続で増加し、初めてトップとなった。長時間労働を強いる企業のイメージは良くない。Z世代では「できれば定時に帰り、自分や家族との時間を大切にしたい」と考える人が増加していることの、結果とみられる。

「結婚後、子供が生まれたら仕事とどう向き合うか」という問いに対しては、「それまでよりも残業や休日出勤を減らしたい」とする傾向が見られる。結婚、出産といったライフステージの変化に対して、ワークライフバランスを重視した判断をするようだ。中でも女性は「パート・アルバイト」など、雇用形態にこだわらない働き方を選択肢としている。男女ともに「家庭生活の充実」を優先するZ世代の価値観がうかがえる。

企業は、「業務の棚卸」と「残業時間の可視化」を行い、働きやすい環境・制度を整えていくことが求められる。同時に、社員に対しては「限られた時間の中で成果を出す」=「生産性が求められている」ということについて、伝える必要があるだろう。

今後のキャリア、つまり「将来会社でどのような役割を担いたいか」については、「管理職」(24.8%)よりも「専門家」(33.4%)を志望する新入社員が多い。「マネジメント」より「プロフェッショナル」志望が多いのは、調査開始から5年継続する傾向だ。

「スキルアップのための取り組み」についての問に対しては、将来のキャリアを決めている新入社員ほど学習している結果となった。キャリアの方向性が定まっていない人は、「特に何もしていない」(38.9%)が最も多い。

「スキルアップのために取り組んでいること」の問に関しては、「スマートフォン、タブレットPC上で学習アプリを使って勉強をしている」(21.3%)が年々増加しているのが目立つ。Z世代は、モバイルツールを使う機会が多く、学習アプリも充実していることが背景にある。企業は、新入社員のZ世代の学び方に沿った、育成方法を検討する必要がある。

別の調査では、Z世代の「通勤時間」に対する考え方を調べている。

Z世代の働き方。「通勤時間」はスマホとアプリで効率化

通勤総合研究所(通勤総研)では、若者の通勤&働き方を調査した。「先輩社会人の新卒時代の働き方」との比較という形で発表れている。調査対象は18~29歳、1都6県在住、新社会人および社会人歴2~4年目の男女で、新社会人100名・社会人歴2~4年目200名となっている。

調査では、Z世代である新社会人の99%が「通勤や仕事を効率化して取り組みたい」と答えた。新社会人が、最も効率が悪いと思っている場面は「通勤時間」だ。

先輩社会人の現実の通勤時間が「49.7分」に対して、新社会人の理想は「27.9分」となっている。通勤のストレス度については、先輩が10点満点で「5.4点」に対して、Z世代では「6.2点」となっている。Z世代の新入社員は、通勤にストレスを感じている。

「通勤を効率化するための有効ツール」の選択肢としては、スマホ・タブレット・本・音楽プレーヤー・新聞などがあるが、Z世代である新社会人がダントツで選んだのは、「スマホ」で60%を占めた。

「学生から社会人になって使うようになったアプリ」については、通勤・移動サポート系アプリ、乗り換えや地図アプリ、電子マネーアプリなど、通勤・移動をサポートしてくれるアプリが増えている。

調査では、「スマホ定期」の利用率も調べている。新社会人では18.0%、先輩社会人では24.0%が、スマホ定期を利用。利用する先輩社会人の89.6%が「通勤が効率的になった」と回答した。なお、社会人全体では、10.8%となっており、Z世代・ミレニアル世代でスマホ定期利用率が高いのが分かる。

さまざまな世代が働く企業。「価値観のギャップ」へどう対応するかが問われる

新しい価値観をもつといわれる「Z世代」。調査では、フリーランスなど新しい働き方の登場を背景に「就社意識」の低さが分かる。また「ワークライフバランス」を重視し、長時間労働よりも、自分と家庭の時間を大切にする。「効率」を求め、仕事や通勤の無駄にストレスを感じ、スマホやアプリを利用して解決をはかろうとする。

企業では、さまざま世代が働いている。Z世代の新入社員に対して、価値観のギャップを感じる人もいるかも知れない。企業もZ世代の新入社員も、お互いをよく知り、対応していくことになるだろう。

企業は、Z世代を新入社員として迎える時代になっている。新しい価値観をもつ消費者という視点で、Z世代を分析する調査も多くある。これからは、Z世代が、どんなキャリア観を持って働いていくのかが、より注目されることになりそうだ。

img: PR TIMES​