昨今「ミレニアル世代」という言葉を目にすることが多くなってきた。AMPでも「ミレニアル世代」に向けた情報を多く取り扱っている。厳密な定義は存在しないが、リサーチを行う場合には、25歳から39歳の年齢層を指す。「ミレニアル世代」より下の世代を表す言葉には、「ジェネレーションZ」があり、18歳から24歳の層を指して使われる。

10代の多感な時期から、インターネット・スマホ・SNSを利用し、デジタルに当たり前のように親しむ「デジタルネイティブ」であることが特徴だ。この点において、40代より上の層とは、ライフスタイルや考え方に断絶があるといわれている。

「若者の…離れ」という言葉も、最近よく目にする言い回しだ。さまざまな業界で、「若者が消費をしなくなっている」となげく声が聞かれる。しかし、これはビジネス現場が「ミレニアル世代」の消費行動に対応できていないことが一因ではないだろうか。

「ミレニアル世代」の消費行動のカギは何なのか。株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメントが実施した調査に、そのヒントを求めてみたい。

「今欲しいモノ」が多い「ミレニアル世代」

「ミレニアル世代の消費意識に関する意識調査」は、2017年11月29日~2017年12月18日、インターネット調査の方式で行われた。日本・中国・アメリカ・ドイツの都市部に住む、 18~64歳の男女(2,124サンプル)が対象だ。

調査では、まず最初に「ミレニアル世代が欲しいモノ」について調べている。「若者は消費をしない」という印象に反し、「今欲しいモノ」の選択数は、4カ国ともミレニアル世代よりも下で、多くなっている。消費意欲は、意外と強いようだ。

「欲しいモノ」の内容を見てみよう。「今欲しいモノ」の調査の選択肢は、ファッション関連、デジタル関連、コンテンツ関連、クルマ・バイクなどに分類されている。

「ジェネレーションZ」で特徴的だったのは、日常で使う、「洋服」「靴」「カバン」「ゲーム」が多いことだ。「ミレニアル世代」では、男性が「パソコン・スマートフォン」といったデジタル関連、女性で「服・靴・バッグ財布」などのファッション関連が多かった。

日本を除く3カ国の「ミレニアル世代の男性」で、「ゲーム(ソフト)」が、上位に入っている(アメリカ2位、ドイツ1位、中国8位)。デジタルネイティブであることにより、本来「ゲームは子供が遊ぶもの」という固定概念をくつがえしている、と考えられる。

また、「家」や「クルマ」が各国の「ミレニアル世代が欲しいモノ」ランキングの10位以内に入ってくるのも、意外な結果だ。先進国では近年、若者のクルマ離れが話題になっている。経済的事情により、購入のハードルが高いのであって、必要ないとは考えられていないようだ。

このように、「若者の…離れ」という常識に反して、ミレニアル世代の消費意欲は高い。では、ミレニアル世代は、どうやって購入するものを選んでいるのだろうか。

「SNS」でモノを選ぶ「ミレニアル世代」

調査では、SNSと消費の関係性を調べている。「SNSで話題になったモノをよく買う」かの問に対しては、ミレニアル世代を境に大きく意識に違いが生じている。中国をのぞく3カ国で、40歳から64歳に対して、数倍の値をしめしている。「SNS」の重要度がミレニアル世代ではやはり高いようだ。

また4カ国共に、女性よりも男性において「SNSで話題になったモノをよく買う」割合が高い。新しい消費者像として「インスタ映え」を重視する女性が注目されているが、男性も、SNS上にアップされる「商品についての利用者の率直な感想」を購入の参考にしているようだ。

購入する際の情報源についても調べている。「新しい・面白い情報の入手ソース」は、全世代で各国とも、テレビを中心とするマスメディアが高くなっている。40代より下の年代に特徴的なのは、企業・専門家以外の「インターネット上の一般人」をソースにしていることだ。さらに言えば、不特定多数の一般人ではなく、「自分のプロフィールに近い」「そのジャンルで有名な人」「共感できる人」というように、誰が発信しているのかも重要になっているようだ。

ミレニアル世代の特徴として、「リアリティ=生活者」の情報が消費行動のカギになっているのがわかる。

「実際に商品を利用した後に感想や評価をSNSにアップするか」という問いに対しては、4カ国共にミレニアル世代の下の世代(ジェネレーションZ)で高く、年齢が上がるにつれてSNSにアップする傾向は低くなっている。商品を買ったら、感想をSNSにアップするというのはデジタルネイティブの習慣となっているといってもいいかもしれない。

このように、ミレニアル世代ではSNS上に購入した商品の感想をアップし、それを誰かが参考にして欲しいモノを選ぶ、というサイクルが存在する。ミレニアル世代が新しい消費文化を創り出しているのだ。

ビジネスの中心が「ミレニアル世代」へと移る今、カギとなるのは「SNS上での共感」

さまざまな業界が、若者の消費動向にどうマーケティングを行うべきか頭を悩ませている。導入でも取り上げたが、これは消費の中心が「ミレニアル世代」へ移行しているにも関わらず、ビジネスの現場がそれに対応しきれていないことによると考えられる。デジタルネイティブの「ミレニアル世代」は、その感性が上の世代とは一線を画しているといわれるが、消費行動においても断絶があるのだ。

調査の結果を見ると、ネット・スマホ・SNSの利用が当たり前になっている「ミレニアル世代」では、消費行動においても「SNS」の存在が大きい。また、意図的な「拡散」や見た目の「写真映え」よりも、「一般生活者の共感できるリアルな声」によって動かされる、という特徴もあるようだ。

これからのビジネスの成功には、「ミレニアル世代」が創り出す新しい消費社会への適応が、不可欠なものになっていくといえるだろう。

img: PR TIMES