ドローンや画像認識技術など、テクノロジー導入による作業効率改善、コスト削減の効果はさまざまな産業分野で注目を集めているが、警察も例外ではない。

海外ではすでに警察によるドローン導入が着々と進んでいるようだ。

シンガポールでは、2017年末に警察ドローンのプロトタイプがお目見えした。サーチライトや警報装置が装着されたドローンで、捜査やパトロールを支援・代替することを目的としている。また、救助や人質事件などへの応用も想定されているという。

ドローンに装着されているサーチライトの明るさは1万6000ルーメンと乗用車のヘッドライトの10倍以上。森林地帯での捜索活動などで活用される見込みだ。カメラはフルHDでの動画撮影ができ、上空から車のナンバープレートを撮影することも可能という。


シンガポール警察が公開したドローン(YouTube Channel NewsAsiaより

このドローンを操縦するパイロットは数カ月間トレーニングを行い、シンガポール民間航空庁(CAAS)が実施する試験に合格する必要がある。

今回お披露目されたドローンとは別に、シンガポール警察は2016年からドローンによる交通管理や人混み監視などでの試験運用を実施しており、ドローン導入への意欲は非常に高いといえるだろう。

シンガポールは空だけでなく海のパトロールも無人機が行うようになるかもしれない。シンガポール警察沿岸警備隊が2017年末にプロトタイプの無人パトロールシップ2隻を公開したのだ。

全長9メートルと16メートルの無人パトロールシップは自律運行が可能で、違法入国者の発見が主な目的だ。最高速度は30ノット(約55キロメートル)。シンガポールは違法入国を防ぐ取り組みに力を入れている。沿岸には300台以上のカメラが備え付けられているだけでなく、レーダーも導入されているほどだ。現在、無人パトロールシップへの試験運用とアセスメントが行われている。

シンガポールでは少子高齢化が進み、労働力不足が深刻化しているといわれている。また、シンガポールの労働市場においては生産性の改善が課題となっている。こうした課題を一挙に解決してくれるドローンやロボットへの期待は非常に高く、警察だけでなくホテル、病院、銀行などで導入検討、または実際に導入が進んでいる。

シンガポールに先行する欧米の警察ドローン

警察によるドローン導入は米国、英国、カナダなどでも進んでおり、警察ならではの活用方法が編み出されている。

サーモグラフィーカメラをドローンに搭載すれば、視界の悪い森林や山間部でも行方不明者の体温を頼りに捜索することが可能となる。

交通事故の現場検証では、ドローンによる空撮映像と3Dソフトウェアを組み合わせて、事故がどのように発生したのかを検証することができる。また、同じテクニックを事件現場検証に応用することもできるようだ。


ドローンの空撮映像と3Dを組み合わせた事故再現(droneflyウェブサイトより

カナダではオンタリオ州警察が、ドローンを使った交通事故処理を行っている。1~2時間要していた交通事故現場の現場検証・地図作成は、ドローンを使うことで15分に短縮することが可能という。

事故現場検証の時間短縮は、特に高速道路において重要といえる。なぜなら、交通事故により高速道路を封鎖する場合、その間、多大な経済損失が生まれるからだ。時間を短縮できる分、経済損失を防ぐことができるのだ。

一方、2017年7月英国で登場した警察ドローンは、実際に行方不明者の捜索や裁判での状況証拠集めで活躍したとBBCなどが報じている。 英国では今後警察人員が減少するだけでなく、警察予算が縮小される見込み。予算縮小でヘリコプター利用が難しくなることを考えると、コストを抑えられるドローンへの需要はさらに高まっていくはずだ。

ゴールドマン・サックスの試算によると、警察ドローン市場の規模は米国だけで8億8500万ドル(約1000億円)。英国のように警察人員と予算の縮小に直面する国は多いはず。グローバルでの市場規模拡大とともに、警察ならではのドローン活用がどう進化していくのか注目していきたい。

img; YouTube Channel NewsAsia , droneflyウェブサイト