INDEX
AirbnbやAnycaなど、自身が保有している資産をシェアすることでマネタイズするシェアリングサービスは、すでに世界中で当たり前なものになっている。実際にそのサービスを利用したことのある人も多いだろう。
現在、様々なサービスが登場しているが、それらの中でも注目を集めているのが13日間で約28億円(2,548万USD)の資金調達に成功したという「MOOVER」だ。今回は、フェーズ2をスタートさせた「MOOVER」とシェアリングサービスの現状をみていこう。
モノやリソースを共有する世界
シェアリングエコノミーとは、空き部屋やクルマ、衣服や家電等のモノから、労働力やデジタル資産等の目に見えないリソースまで、「個人が保有している持て余した資産の貸出・提供を仲介する」サービスのことだ。
具体的には「モノやリソースを所有するのではなく共有する世界」で、既存の経済形態にはない以下のようなメリットがある。
- 持て余した資産をマネタイズできる
- 購入するよりも安く利用することができる
- 無駄な資源を抑える事ができる
- 個人の善が拡散される
シェアリングサービスの代表例としては、世界規模で展開しているライドシェアサービス(タクシーや一般の車を配車可能にする)のUberやLyft、空き部屋を宿泊施設として提供を可能にするAirbnb等が有名だ。
Uberは設立2009年から2017年6月現在で通算50億回の乗車を達成したと発表しており、企業価値は700億ドルとも言われている。
Airbnbは設立2008年から 2017年6月現在で通算宿泊者数1億6,000万人を達成、企業価値は300億ドルと推定されている。
このように設立10年に満たない企業が世界的トップ企業に押し上げるほどシェアリングエコノミー市場は活気に満ち溢れているのだ。
余ったモバイルデータ通信をシェアするMOOVER
このようにシェアリングサービス全盛の中、2017年12月にMOOVERはスタートした。そしてフェーズ1で、13日間で約28億円(2,548万USD)の資金調達に成功したことで注目を集めている。
MOOVERは契約する通信キャリアの垣根を越えて、全てのモバイルユーザーと余ったモバイルデータ通信のシェア(売買)を可能にするプロトコルだ。そして、これまで不透明だった余剰資源に価値化を図る新たなシェアリングエコノミーなのだ。
つまり、単にデータ通信量のシェアリングそのものが目的ではない。世界の課題であるデジタル・ディバイド問題の解決の一助となり、誰もが平等に、本当に自由なインターネットを手にすることを目指したプロジェクトと言える。
フェーズ1の成功を受け、2018年2月1日12時からコントリビューションフェーズ2がスタート、「MOVE」トークンセールが開始された。これについて、MOOVERプロジェクトCEO のJohn Peterson氏は2018年秋頃に「MOVE」トークンが仮想通貨取引所へ上場することを発表し、さらに注目が高まっている。
匿名性を保ったままグローバルにシェアが可能に
MOOVERは契約する通信キャリアの垣根を越えて、モバイルデータ通信のシェアをするわけだが、具体的にモバイルデータ通信のシェアリングとはどんなことだろうか?
例えばこういったケースが想像できるだろう。スマホを利用しているA氏という人物が、A社のSIMを契約して毎月3GBプランを選択しているとする。
しかし月末近くでも1GB余らせていたとしよう。もちろん、それでもA社は通信量が余ったからといって返金には応じてはくれない。だから、A氏は余ったデータ通信を使わずに利用料を支払う他ない。
また、B社の1GBプランを契約しているBさんは、とても節約家だとしよう。しかし月途中で1GBを使い切ってしまい、速度制限がかかってしまった。これをB社に相談するも、割高な価格でデータ通信の追加購入を勧められてしまった。
Bさんはお金を使うことにシビアなので、泣く泣くスマホの利用を控えることにした。
この状況はA氏、Bさんのどちらにとっても、「不利益で不便なこと」である。つまり、通信キャリアにとってだけ「都合の良いこと」を押し付けられているということになる。
この状況を解決してくれるのがMOOVERだ。MOOVERネットワークを介して、A氏は余ったモバイルデータ通信量1GBをBさんに買ってもらうことができるのだ。そして、今まで捨ててしまっていたモバイルデータ通信量をマネタイズできるというわけだ。
各国の通信キャリアの中にはデータをシェアすることができるものもある。しかし、これらは同一通信キャリア内で契約する家族・友人またはユーザー同士でモバイルデータ通信をシェア(プレゼント)することが条件となるなど様々な制約がある。
それに対してMOOVERネットワークは、ユーザーの関係性や契約する通信キャリアに囚われず、匿名性を保ったままグローバルにシェア(売買)を可能にする。このようなエスクローサービスとしての機能を持つ点が大きな特徴だ。
MOOVERが打った新しい一手
こうしてみると、シェアリングサービスはすでに様々な分野でのサービスが登場している。しかし、これまではいわゆる「モノ」を対象とした既存のサービスをシェアするというものが多かったように思われる。
これに対し、MOOVERはモバイルデータ通信をシェアするという新しいサービスで切り込んできた。シェアリングサービス市場でどこまでの地位が築けるか、注目したい。