少子高齢化は当面の日本の大きな課題として話題にのぼることが多い。ビジネスにおいても働き手が減少していくのは由々しき事態だ。その対策としては、業務の徹底的な効率化を図ることによって労働人口の減少をまかなうということも方法としてあげられる。

株式会社 GA technologies (ジーエーテクノロジーズ)は、首都大学東京の高間研究室と不動産テック分野における生産性向上に関する共同研究成果発表会を開催した。発表会では、AI(人工知能)を活用した物件レコメンドシステムの共同研究事例や自社内での業界初のマイソク自動読み取りシステム開発を始めとするRPA(ロボットによる業務自動化の取り組み)実現により、不動産業における業務改善に大きな成果が認められたと発表した。

中古不動産仕入れ業務のスピードを最大55%まで削減

今回の産学共同研究では、AIの機械学習を活用した物件レコメンドシステム導入により、リノベーション業務における物件提案までの時間(中古不動産仕入れ業務のスピード)を最大55%まで削減することに成功した。

また、AIの画像解析技術を活用した不動産業界初のマイソク自動読み取りを始めとするRPA実現では、物件仕入れ業務に係る時間を1/3に圧縮することに成功した。

AIにより仕入れ業務工数の2/3を自動化

具体的な研究・取り組みとしては、

  1. 産学共同プロジェクト・不動産物件におけるレコメンド機能の研究
    ・機械学習による中古不動産仕入れ業務の精度・スピード向上実現
    リノベーション用中古不動産仕入れ業務内で、首都大学東京高間研究室の計算モデル提供により、機械学習を応用した物件レコメンドシステムを実験的に導入(2017年9月~10月の2か月間実施)。これによりリノベーション業務における物件提案までの時間を最大55%まで削減することに成功した。また、この成果は台湾で行われた人工知能に関する国際会議(TAAI)にて共同発表した。
  2. マイソク自動読み取りシステムなどのRPA実現
    ・AI活用により不動産物件仕入れにかかる業務フローを自動化
    中古不動産仕入れ業務において、AIの画像解析技術や機械学習により、マイソクの自動読み取り(とデータベース化)、オススメ物件選択、契約書の自動作成などを実現し、仕入れ業務工数の2/3を自動化することに成功した。これにより、社内の生産性向上を実現するとともに、社内の人的リソースを顧客とのコミュニケーションや営業活動などに注力する体制を実現した。

営業面ではすでに実導入されている不動産業界のスマート化

不動産業界でのスマート化と業務効率化はすでに始まっている。ケイアイスター不動産株式会社は、2017年12月より株式会社ライナフが提供する「スマート内覧」を同社の一部物件を対象に試験導入を始めた。

スマート内覧は、スマホ携帯電話を利用して、セルフで内覧できるサービスだ。専用のサイトからアカウント登録(無料)をし、webカレンダーより内覧したい物件の空き状況を確認した上で、空いている中から希望の時間をオンラインで予約する。

予約当日、ユーザーのみで現地に向かい、アカウント登録した携帯電話で「開錠」ボタンを押すと、施錠されている鍵が開き、自由に内覧することができる。退出の際も開錠同様に携帯電話から施錠をすることができるという仕組みだ。

これは、玄関のシリンダーに直接貼り付けることが出来る「NinjaLock」というドアロックシステムを使用し、予約されている携帯電話の情報を確認し、予約時間内のみ開錠・施錠の指示を受け取ることができるもの。

今後、スマートスピーカーが普及すれば、このようなスマートホーム化は一層進むと思われる。この事例は業務スタッフにも、ユーザーにも効率化を促す事例だといっていいだろう。

AI活用による業務の効率化は労働人口の減少をまかなえるか

このように不動産業界では、AIの活用による業務の効率化への取り組みが始まった。もちろんどの業界でも業務効率化はいつまでたっても重要な課題であるが、AIを利用すること、産学連携を実現させることが今後の業務効率化をじつげんさせるキーワードになりそうだ。

今後の少子化による労働人口の減少をどこまでカバーできるか、今後の展開に注目したい。