ビジネスの現場と、これからビジネスの世界に身を投じる学生では、やはりビジネスへの理解もイメージも差異がある。

そのミスマッチを解消するためにインターンシップは有効だとされ、多くの企業がさまざまなインターンシップを行なっている。この10年で参加学生は2倍に増加、半数以上の企業が導入しているという。

しかし、そのインターンシップの中でも乖離は起きている。会社説明のみに留まるケースも増えおり、そのため職業理解が進まず、また企業から適切な評価を得られず自己理解が深まらないまま就職活動を迎える学生が多く、就職後のミスマッチが懸念されている。

総合人材サービスのパーソルグループで人材派遣・アウトソーシング事業を手掛けるパーソルテンプスタッフ株式会社は、2017年12月より、就職活動を控えた学生が派遣スタッフとして企業で働き、実践的な就業体験を積むことができる派遣就業サービス「はたまな」を開始する。

専門コンサルタントによる就業前の研修や、就業中フォロー、就業後の評価など、派遣サービスのノウハウを生かし学生の就職活動を支援する方針だ。

拡大傾向にあるインターシップ。実施率は7年間で約5.3倍に

まず、インターシップの現状を見てみよう。

2016年に文部科学省が設置した「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議」によると、インターンシップ(単位認定を行うもので、特定の資格取得に関係しないもの)の実施大学数や参加学生数は、1997年以降増加傾向にあるという。1997年には107校だった実施校数は2014年には566校に、実施率は18.3%から72.9%まで約5.3倍に拡大している。

また、2016年度は、学生の参加率は30.5%、企業などの実施率は55.6%、大学などの実施率は58.9%となっている。

単なる企業の業務説明の場で終わることが最大の課題

しかし、これらインターシップの実質的な就業体験を伴っていないという大きな課題がある。

単なる企業の業務説明の場となっているものが少なからずあるというのが実態だ。これは、インターシップと称しても実際は主に1日などの短期間で、実質的な就業体験を伴っていないからだ。

大学などのインターンシップ実施目的では、「仕事理解の促進」(91.3%)、「業種理解の促進」(85.9%)、「学生自身のキャリア観の明確化」(84.3%)が8~9割であるのに対し、「就職実績の向上」は25.4%と低かった。

しかし、学生の49.9%がインターン先から「プレエントリーを勧められた」と回答しており、また、22.2%が「インターン先から内定を取得」しているという結果になった(出典:文部科学省「インターンシップと就職・採用活動との関係」)。

このように実際のインターシップの実態は就職・採用活動そのものとして行われることが多く、大学側と学生の意識も異なっている。

実践的な就業体験を積むことができる派遣就業サービス

今回登場した「はたまな」は「はたらく×まなぶ」をコンセプトに、就職活動前の学生(大学生・短大生・専門学生)を対象にした実践的な就業体験を積むことができる派遣就業サービスである。

パーソルテンプスタッフの派遣スタッフとして登録した学生に対し、志向性や勤務条件に応じた仕事を紹介。学生は派遣先企業の指示のもと、実際の職場でより実践的な仕事を体験することができる。

就業前には専門コンサルタントがビジネスマナーや業界・職種を理解するための研修を実施。また、就業中のフォローや就業後の評価など、派遣サービスのノウハウを生かし学生の就職活動を支援するのが狙いだ。

学生、企業ともにメリットが享受できるサービス

従来のインターンシップとは異なり、学生は実践的な就業体験を積めるだけでなく、仕事への取組み姿勢や適性に対する客観的な評価を通して、自己理解を深め就職活動に生かすことができるという。

一方企業にとっては、意欲の高い人材を柔軟に確保し活用できるほか、学生ならではの新たな視点を取り入れ、事業戦略や業務改善に生かすことも可能。また、早期に学生と接点を持つことで、新卒採用に向けた企業認知の向上への効果も期待できるとしている。

インターシップを本来の形に

「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議」では、「インターンシップにおける主役は学生である。個々の利益を優先するのではなく、広い見地から、将来の我が国を担う若者を育成するために、大学等と産業界の双方が協働しあうことが重要」としている。

このように、企業と新卒採用者のミスマッチはできるだけさけたいもの。インターシップはそもそもそのミスマッチをさけるために行われるものであるため、今回のサービスが本来の形に戻し、学生の就職活動に一石投じるか、今後の動向に注目したい。

img; マイナビ ニュース , PR TIMES