ここ2年ほど、横浜と札幌の2拠点居住をしている。横浜は実家。札幌は賃貸に住んでいるが、年の半分ほどしか滞在しないため、部屋には本当に必要なものを見極めて置いている。

真っ先に要らないと思ったものが洗濯機だ。家族が多いと1日に何回も洗濯機を回すので、各家庭にあるほうが効率が良いが、一人暮らしだと週に1度か2度のまとめ洗いになる。その場合、本当に各部屋に洗濯機は必要だろうか。街にはコインランドリーだってあるし。

とはいえ、各家庭に1台、洗濯機があるのが当たり前の日本。自分がそんな常識から抜け出せたのは、昨年行ったポートランドのおかげかもしれない。

ポートランドでは、洗濯しながらクラフトビールやコーヒーを楽しめる

ポートランドのダウンタウンからちょっと外れたエリア、家賃の高騰から逃れたクリエイターが集まるミシシッピ通りの「Spin Laundry Lounge」は、コインランドリーにラウンジが併設されていて、洗濯機を回している間にくつろぐことができる。

ポートランド自慢のコーヒーやクラフトビールも楽しめるし、サステナビリティへの意識が高いポートランドらしく、洗剤は環境負荷の低いものを利用できる。販売しているオリジナルのランドリーバッグもかわいいので、僕は自分の洗濯物を入れる用に買ってきた。

日本でも、カフェ併設でデザイン性に優れたコインランドリーが登場

ポートランドでのコインランドリー体験に感動していたが、最近では、日本にも一風変わったコインランドリーがお目見えしているようだ。

洗濯代行サービスの「WASH&FOLD」は、全国で17店舗のコインランドリーを運営している。

コインランドリーは洗濯代行の集荷場所としての役割も持つ。だが、洗練されたロゴや店舗デザインで、今までの日本のコインランドリーのイメージから抜け出し、テレビなどでも取り上げられているようだ。

新店舗は中目黒駅の高架下商業施設「中目黒高架下」にオープン。蔦屋書店やアパレルのMHLと同じエリアでの展開は、今までのコインランドリーのイメージを覆すという意志を感じる。

サトウキビ由来の再生可能なエコ容器や、ニュージーランドにおいて広く支持されいてるエコ洗剤「エコストア」を採用したことで、環境意識の高いミレニアル世代の支持を集めている。

フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー」は、ドイツ生まれのコインランドリー。オーナーのFreddy Leck(フレディ・レック)氏は「ランドリーの時間をもっとみんなに楽しんでもらいたいんだ」と話す

​「単に洗濯をする場所にはしたくなかった」というフレディ氏は、地元コミュニティにおけるサロンとしての役割をコインランドリーに持たせるため、店内に小さなカフェスペースを設けている。

店内は個性的な壁紙とアートワーク、ユニークなオブジェ、そしてフレディ氏お気に入りのクラシック音楽が流れている。単なるコインランドリーではなく、居心地の良い空間を作ることに力を入れていることがわかる。

学芸大にある日本の店舗にもカフェが併設され、コーヒーやマフィンが楽しめる。オリジナルグッズもバリエーション豊かだ。洗濯の「基本のき」であるアイロン掛けなどのワークショップやミニライブを開催するなど、コインランドリーの枠に収まらないユニークな展開が特徴的だ。

マンションにパブリックスペースをつくり、新しい暮らしを提案している「ソーシャルアパートメント」もコインランドリーを持っている。

ワールドネイバーズ清澄白河」の1Fには、ソーシャルアパートメントの利用者だけでなく、外部の人間も利用できる最新設備を導入したコインランドリー「SoLiquid」が設置されている。

コインランドリーには「ワールドネイバーズカフェ」が併設されており、洗濯の待ち時間にはカフェでコーヒーを飲むことができる。入居者はコインランドリー代行サービスも月2回まで無料になる。

観光客も増えてきた清澄白河で、観光客と地域で暮らす人々の接点をつくる。カフェはコミュニティづくりにも役立ちそうだ。

空いてる時間に何を提供するか。組み合わせで価値をアップデートする

僕自身がコインランドリーを利用して感じたのは、毛布や羽毛布団、スニーカーなども洗える高性能洗濯機を低価格で利用できる便利さだ。日本のミレニアル世代には縁の薄いコインランドリーだが、便利さを知れば利用客も増えるだろう。

ただ便利さを訴求するだけでは、ミレニアル世代の気を引くことは難しいが、カフェを併設することで、それまでコインランドリーを使ったことがない人にも行ってみようというモチベーションが生まれる。「フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー」のようにワークショップやライブを行うことで、最初は「洗濯」以外の目的でも足を運んでもらいやすくなる。

洗濯物を洗う待ち時間には、様々なチャンスが眠っているかもしれない。たとえば、映画館併設で映画を見終わると洗濯も終わっている、ガソリンスタンド併設で洗っている間に給油や洗車を済ます、仕事終わりの利用者が多いならアルコールの提供もいいだろう。付加価値の付け方は、カフェやイベントだけに留まらない。

価値があるのに、その価値が適切に伝わっていないとき、他の何かと組み合わせて付加価値をつけると、人の行動は変わる。組み合わせ方次第では、今は価値がないと思われているものでも、その価値を多くの人に届けられるだろう。

img : WASH&FOLD, フレディ レック・ウォッシュサロン, ワールドネイバーズ清澄白河

【他の生活に関連する記事】