オフィスにいなくても仕事に取り組める時代になった。だが、自宅やカフェで作業をするだけでは、なんだか味気ない。仕事に取り組む環境を変えようと思った時に、「旅先」は候補のひとつに挙がりやすい。

旅をしながら働く。そんな誰しもが一度は実践してみたいと考えるワークスタイルが、日本の大企業にも徐々に広まりつつある。

旅先で集中して仕事をする「ワーケーション」

旅行先のリゾート地などで休暇を兼ねて仕事をする「ワーケーション」という考え方が注目を集めている。「ワーケーション」とは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語だ。

旅先でも業務時間内は仕事をし、その間は出勤していることになる。集中して仕事に取り組むことができ、朝の時間や昼休みの時間、就業時間後はリゾート地で充実した時間を過ごせる。集中すべき時間以外は、旅行のように過ごせるため、モチベーションが上がり、生産性が高まることが期待できる。

「ワーケーション」というワークスタイルを利用すれば、家族でリゾート地に旅行に行き、平日の業務時間中はカフェやホテルなどで仕事をしているが、夜の時間や週末は存分に家族と過ごすことができる。

実現できれば理想的なワークスタイルだが、実現のためには企業に出勤扱いにしてもらう必要が出て来る。企業は、こうしたワークスタイルをどう見ているのだろうか。

JALが「ワーケーション」導入、他企業もこの流れにのるか

JALは(日本航空)は働き方改革の一環として、パイロットや客室乗務員などを除く社員を対象に、今年の7月から8月の2ヶ月間の間で最大5日間ワーケーションを認める取り組みを実施した。

JALはこれまでもフレックス制度や、日ごとに個人単位で勤務時間帯を選べる制度、テレワークの推進など(2016年度におけるJALグループ全体でのテレワーク実績は5,177人・日で前年比2倍だったとのこと)、社員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方のあり方を模索してきた。

JALのワーケーションでは、業務時間中は会社貸与のパソコンを使って滞在先で仕事をし、会議もリモートで参加。業務開始時と終了時に上司に電話することで、仕事の進捗状況を報告する。ワーケーション中は出勤扱いとなり、有休と組み合わせて取得することももちろん可能だ。

他にも日本マイクロソフトが昨年より全社員約2,200人を対象にワーケーションを導入している。土日の旅行と組み合わせ、金曜日の早朝に旅先に移動。金曜日は滞在先でワーケーションを行い、土曜日の朝から旅行先での休暇を楽しむという利用が広がっているという。

和歌山県は今年から企業向けに、南紀白浜といったリゾート地でワーケーションを実施してもらうべく普及活動に取り組んでいる。8月に「ワーケーション・フォーラム」を総務省や経済産業省と共催。東京一極集中を是正する地方創生の実現にも大きく貢献するとして、国も積極的に推進しようとしている。

いくつか取り組みは始まっているが、今のところ日本ではワーケーションの導入事例は数少ないのが現状だ。JALやマイクロソフトのような大企業、地方自治体が「世界中のどこでも仕事をする」制度の整備と、取り組みの内容を発信することで、日本でも柔軟で多様な働き方が促進されることが期待される。

出張ついでに休暇を楽しむ「ブリージャー」

ワーケーションと似たワークスタイルとして、欧米のビジネスマン中心に「ブリージャー」という働き方が広まりつつある。「ビジネス」と「レジャー」を組み合わせた言葉で、日本語に直すと「出張休暇」。つまり出張先で仕事を終えたあと、そのまま休暇をとって観光を楽しむというものだ。

ワーケーションは旅先でリモートワークを認める制度(働くので出勤扱い)、ブリージャーは出張ついでに休暇を認める制度(働かないので有休扱い)という違いがある。

Booking.comの調査では、過去1年間で世界のビジネスマンの半数近くの49%が、出張期間を延長し異なる都市や国を旅行していると回答。それに対し日本では、旅行のために出張期間を延長すると答えた人は、わずか22%と世界で最も低い数値となっていた。

日本の企業では「ワーケーション」や「ブリージャー」の普及は始まったばかりと言えるが、東京は出張先として第二位の人気を誇る。ザ・プリンスパークタワー東京(港区)は2016年10月に部屋を改装するなど、ブリージャー目的のビジネスマンを取り込む体制を整えている。

旅をしながら働くが世界のトレンドに

キャンピングカーで旅をしながら暮らし、仕事をする「vanlife」というライフスタイルも注目されている。

欧米を中心に広がる「vanlife」だが、日本で「vanlife」を実践する人も登場している。「旅する起業家」成瀬勇輝氏は、オーディオトラベルガイド・モバイルアプリ「ON THE TRIP」というサービスをスタート。

ON THE TRIPのチームのオフィスは、なんと自前で改造したバスの中。バスの中で仕事や生活ができるよう、数ヶ月をかけてDIYで太陽電池と蓄電システム、キッチン、オフィスデスク、ベッドなどを設置して、これからは1-2か月ごとに都市を変えながらアプリを開発していくという。

Mistletoe 株式会社 代表取締役社長 孫泰蔵氏は、世界中のどこでも自由に暮らせる世の中をつくるために、「Living Anywhere」という考え方を提唱している。旅先で“社員“として働くワークスタイルを提唱する人材マッチングサービス「Jobbatical」も注目だ。

【参考記事】

世界では「働き方」がどんどん多様化し、それを認める動きが活発になっている。日本でも「働き方改革」の取り組みで、フリーランスだけでなく会社員にも自由な働き方を実現するための施策が加速している。

旅行代理店やホテル産業がブリージャー需要に対して、様々なサービスを提供していけば、出張休暇を取る人が増え、日本企業にもその文化が少しずつ定着していく可能性は十分に考えられる。

5年後の日本で、リモートワークを認める会社が珍しいものではなくなれば、ワーケーションも普及していくことが期待できるだろう。

img : rawpixel.com, Priscilla Du Preez, Anneliese Phillips, on the trip