レオナルド・ディカプリオをはじめとしたハリウッドセレブが高級車ではなくトヨタ プリウスを愛車としたり、ポール・マッカートニーがレクサスのエコカーを注文したら空輸されて大量のCO2を排出したと激怒したり……。そんなワールドワイドなワイドショーネタも含め、エコカーブームが話題になって久しい。

時の流れは早いもので、もはやエコカーの代名詞であったハイブリッド車は過去のものになろうとしている。排ガス規制が世界各国で進められており、従来のガソリン車やハイブリッド車では、その厳格に定められた二酸化炭素排出の基準値をクリアすることは、難しいからだ。

加速する「EVシフト」の波に乗るために

欧州では、排ガス規制が強まっている。フランスに続き、イギリスが2040年からガソリン車とディーゼル車の新規販売を禁止すると正式発表。こうした状況も含め、自動車業界は従来のガソリンを使用した車を電気自動車へ置き換えようとしている。この2017年は「EVシフト」がさらに加速し、大きなトレンドとなっている。

現在の電気自動車業界では「EVシフト」の波に乗るべく、世界各国の大手自動車メーカーはもちろん、スタートアップ企業も含めてしのぎを削っている。業界変化の激しさは、シリコンバレーを拠点として高級電気自動車を製造・販売しているテスラが、2017年4月にゼネラル・モーターズを抜き、時価総額全米1位の自動車メーカーとなったことにも顕著だろう。

日々実験と技術革新が繰り広げられているこの分野において、注目するべき新製品が登場した。スペインのスタートアップ企業evoveloが発表した三輪自動車「mö(モー)」だ。

エネルギーを自給自足できる電気自動車「mö」

「mö」を開発するevoveloは、最小限の資源利用によるパーソナル・モビリティの開発・製造を目的として2013年に設立された。設立当初は、効率的な高性能バッテリーの開発・製造を行ってきたが、2015年から「mö」の開発をスタート。

同社が開発した「mö」は、最大で大人2人、子ども2人が乗れる三輪自動車だ。「mö」の特徴は、ルーフに搭載されたソーラーパネルを通じた発電・充電が可能という点。

ソーラーパネルで1時間充電すれば、5km〜10kmの走行が可能だ。ソーラーパネルの充電のみで走ろうとすると時速5km~10kmしか出すことができないため、現在のバージョンでは、ソーラーパネル充電は走行距離をのばすための補助的な位置付けとなっている。

電源を使った充電の場合は3~5時間の充電で約40〜50km走行するという。さらには自転車のようにペダルアシストを行うことで人力発電ができ、その際は電源による充電と合わせることで最大70kmほどの走行が可能になる。

EVが抱える課題のひとつに、外出先に充電できる場所が少ないという課題がある。急速充電器の標準規格「CHAdeMO(チャデモ)」の普及を目的とするチャデモ協議会によると、日本国内に設置されたチャデモ規格急速充電器は、2017年6月時点で約21,000箇所。これは、ガソリンスタンドの約60%にあたるという

現時点では、ガソリンスタンドの数に比べれば、充電スタンドの数は少ない。また、電気自動車は一回の充電で走れる距離が短く、長距離を走る続けるためには充電が必要になる。そこで「mö」は、ソーラーパネルによる充電を行うことで、充電スタンドを使用せずに走れる電気自動車を実現した。この技術が進化していけば、特定の充電スタンドに駐車する必要や、自宅のガレージでの充電回数が減ることは間違いない。

コンパクトサイズの「mö」は都市をスイスイと走る

「mö」の特徴はソーラーパネルだけではない。その非常にコンパクトなボディもユニークな点のひとつ。同車の全長は一般的な自動車の半分ほどの200cm、全幅は140cm、全高は130cmの三輪自動車だ。その重量は100kgに満たない。

小回りの利く「mö」は、都市部の狭い道をスイスイと乗り回す近距離移動に最適だ。自転車と自動車の中間にある超小型モビリティを使えば、フットワーク軽く都市を移動できる可能性を秘めている。このような超小型モビリティならば、そこまで大きな駐車スペースも不要だ。

都市部の近距離移動に最適という点では、国土交通省が普及に向けて力を入れている「超小型モビリティ」の範疇と言えるだろう。

超小型モビリティは「TOYOTA i-ROAD」や日産の「チョイモビ」をはじめ、まだ実証実験中の段階にある。その中でも、セブンイレブンが宅配サービスに活用しているトヨタの一人乗り超小型EV「コムス」は、実際にセブンイレブンの駐車場で見かけたことがある方もいるのではないだろうか。

超小型モビリティの場合は、自動車に比べて必要な電力が少ないというメリットも挙げられる。都市での短距離移動では、排気ガスを出さない電気自動車の普及が進むことが、低炭素社会の実現に向けて重要となる。

現行の「mö」では難しいが、技術が進化していけば、ソーラーパネルの充電のみで走れる可能性もある。環境に優しく、コンパクトでかわいらしいデザインの「mö」のような超小型モビリティは、今後日本でも受け入れられていくだろう。

世界では「EVシフト」が進んでいる。その中でも超小型モビリティに注目すると、これからもユニークな“車”が出てきそうだ。

img : evovelo