近年多くのメディアに取り上げられ、世の中に広く認知され始めているドローン。空撮だけでなく、農業や建設などさまざまな産業での活用に期待が寄せられている。

産業ドローンの潜在市場規模は14兆円ともいわれており、起業家や投資家に加え、大手企業、政府などさまざまなプレーヤーが注目している。

このようなドローン旋風が巻き起こっている一方で、実際のドローンの活用と効果について、具体的なイメージを持っているひとはまだ少ない。

そこで今回は、産業ドローンのなかでもっとも市場規模が大きいといわれている建設・インフラ分野に注目し、実際の活用事例とコストパフォーマンスについて説明したい。

産業利用で期待されるドローン(筆者撮影)

無駄をどこまで削減できるか、建設現場でのドローンの可能性

建設分野でのドローン活用のインパクトが大きいといわれているのは、建設市場そのものが大きいことに加え、ドローン活用で無駄を大きく減らすことができると考えらえているからだ。

現在の世界の建設市場は8兆ドルとも9兆ドルともいわれる巨大市場だ。PwCの推計では、2030年までにさらに85%伸び、15.5兆ドルに拡大する見込みだ。そのうち57%を中国、米国、インドが占めるという。

建設は世界の人口増加とともに伸びる有望市場ということになるが、実はまだまだ無駄の多い市場であるということも知っておく必要がある。

英国Green Building Councilは、建設資材の調達スケジュール管理ミスなどで、資材の15%が無駄となり、最終的に廃棄されていると報告している。また米国建築家協会は、米国全体の固形廃棄物に占める建設関連廃材の割合は25〜40%になると推計している。

こうした無駄によるコスト増は、最終的に家賃やオフィス賃料などに影響を及ぼす可能性があり、普段建設に関わらないひとも無視できない問題だ。

さて、現場でドローンをどのように活用すれば、こうした無駄を削減できるのだろうか。

それはドローンによって収集されたデータを使い、建設現場の進捗状況を正確に把握し、あとどのくらいの資材が必要なのか精度の高い計算を可能にすることで実現できる。ドローンに搭載されたセンサーやカメラからのデータが3Dモデリングソフトウェアで加工され、建設現場のプロジェクトマネジャーが現状を把握し、正確な判断ができるようになるのだ。


建設でのドローン活用、3Dモデリングソフトウェア大手Autodeskの取り組み

ドローンを建設現場で使うメリットは、人員を危険にさらさず何度もデータ収集を行うことができることだ。プロジェクト進捗率の変動が激しい場合でも、頻繁にデータ収集を行うことで、適切な時期に適切な量の資材調達が可能となる。

また、建設現場の進捗状況を正確に把握することで、人員・設備の配置を最適化できる可能性もある。これは建設工事に遅れを出さず、余分なコストを排除できることを示唆している。

成長を続ける巨大な建設市場。数パーセントのコスト削減でも、そのインパクトは非常に大きいことが分かるだろう。

英国トンネル工事、ドローン導入によるコスト削減事例

ドローンが建設現場で広く普及するまでにはもう少し時間がかかるかもしれないが、すでに一部の先進的な企業は建設現場にドローンを導入し、その効果の実証に成功している。

2018年に英国ロンドンで開業予定の地下鉄エリザベス線のトンネル工事を請け負う建設企業Laing O’Rourke社は、トンネル点検にドローンを導入。

建築専門サイトBIM+によると、Laing O’Rourke社はドローン導入で1カ月あたりの点検コストを1500ポンドほど削減することに成功したという。

ドローンを使わない通常の点検では4人の人員がクレーンを使い1時間ほど作業する。作業内容は、トンネル内のヒビや損傷、設備の緩みなどを目視で確認し、記録のために写真と動画を撮影するというもの。この場合、人員4人の人件費に加え、クレーン設備の稼働費用がコストとなる。

一方、ドローンを使う場合、必要となる人員は1人(ドローン操作)で、作業に要する時間は15分だけ。さらにはクレーン設備を使わないので、その分の費用は圧縮できる。

人件費や作業内容・頻度が変われば、コスト削減率は変わってくる。頻度がより多くなれば、コスト削減率は大きくなってくるはずだ。地震の多い日本であれば、建築物点検の重要性はより高いはずで、ドローン導入のインパクは非常に大きいものになるのではないだろうか。

ドローンの強みは、未知領域のデータを取得可能にすることだ。小売市場ではPOSシステムが導入され、商品仕入れの最適化、廃棄の削減などが実現されたが、ドローンの登場で建設市場でもデータ取得が可能となり同様の変化が起ころうとしていると考えられる。ドローンとデータの活用で、どこまでコスト削減できるのか今後も注目したい。