広い空は自由の象徴だ。だが、何者にも縛られない自由など存在せず、空もその例外ではなく、何かしらの制限の中で管理される。多くの人々が空にドローンを飛ばすことが可能になった今、どのようにコントロールするかが課題になってきている。21世紀、空はどのように管理されるのだろうか。

2017年4月、世界の新経済・新産業を牽引する起業家・イノベーターが一堂に会し、時代の潮流を先取りする議論を交わす『新経済サミット2017』が開催された。

2日にわたって開催された本イベント内でのセッション「広がるドローン活用と空の安全管理」には、AirMap(エアマップ)共同創業者兼CEOベン・マーカス氏が登壇。ドローン航空管制システムの今後について言及された。

ドローン管制システムの現在地

AirMap1

飛行機の航空管制システムのように、ドローンにも安全に空を飛ばせるよう障害物や別のドローン、飛行物などの情報を網羅し把握するシステムは不可欠だ。

無人航空機管制(UAV Traffic Management・以下UTM)と呼ばれる分野に、米国では国を挙げて力を入れている。アメリカ航空宇宙局(NASA)は2015年8月よりUTMの実証実験を開始。2020年の実用化を目指し、動きを加速させている。

日本国内にも動きはある。2016年6月、政府が正式にUTMを導入する方針を明らかにしている。今年度より予算を設け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと協力しつつ、UTMの実証実験や実用化に向けての動きを始めだしたところだ。

民間でもこの分野へ力を入れている事業者が現れている。アジア圏で電動バイクを中心に事業を展開するEVベンチャー・テラモーターズ子会社であるテラドローンは、昨年UTMソリューションを提供するベルギーのUNIFLYと資本業務提携を締結している。KDDIも、ドローンの通信ソリューションと共にUTMを展開する用意を行っているなど、大小さまざまなプレイヤーが動きを見せている。

AirMapは日本市場をも狙う

AirMap UI
UTMの先駆者がNEST2017で登壇したベン・マーカス氏率いるAirMapだ。AirMapは、米国発のUTMサービスを提供する企業。2017年3月時点で、世界125カ所以上の空港および空域管理者が、AirMapを利用。周辺空域情報の提供や飛行記録・飛行状況の確認、デジタル飛行通知の受信、ドローン操縦者とのコミュニケーションに活用している。

同社は国内でも今年3月、楽天と共同で合弁会社楽天AirMapを設立。日本国内におけるUTMサービスを提供するべく準備を進めている。

楽天は2016年4月にドローンを活用した配送サービス「そら楽」を開始し、ドローン事業に参入。「そら楽」自体、現状は他社と同様、実証実験段階だが、AirMapとの合弁会社設立などの動きからはドローンビジネス参入への本気度がうかがえる。

「空の管理」というプラットフォームを抑えるのは誰か

ドローン自体の開発や、ドローンを用いてどのようなビジネスを展開するかが注目を集めている。これらはドローンの可能性を引き出し、価値を最大化する役割を担っている。ドローンの価値が大きくなればなるほど、その「価値」を支える役割は重要になってくる。

ゴールドラッシュでビジネスを成功させたのは、金の採掘を行った者ではなく、採掘に必要なツルハシや作業着、鉄道を提供した者だったと言われている。この構図はテクノロジー時代であっても同様かもしれない。

ドローンをはじめ、AI、IoT、VRなど。現代の金脈と思われる領域が次々と登場している。この金脈でどのように勝負するか。各社の戦い方に注目したい。

img: AirMap